2021年3月24日

相殺と民法改正(不法行為に基づく債務)

令和2年4月1日から改正民法が施行され、債権関係の規定が変更されています。
その中で、損害賠償債務に関する相殺について、これまでと大きく変わった部分があります。

相殺とは、自分と相手方が互いに同種の債務を負担している場合において、双方の債務が弁済期にあるときに、相殺の意思表示をすることによって、お互いに同じ金額について債務を免れることができる制度のことです(民法505条1項)。

具体的に言うと、自分がAさんから時計を1万円で譲り受けたとします。その時、こちらもAさんに対して1万円を貸していて、まだお金を返してもらっていなかったので、1万円の貸金と1万円の時計の代金をお互いに相殺して、無しにしましょうというような場合です。

ただし、相殺には例外があって、改正前の民法509条は、不法行為による債務は相殺ができないと定めていました。

例えば、相手に怪我を負わせてしまった場合や、相手の物を壊してしまった場合の損害賠償債務については、相手に債権を持っているような場合でも、現実に支払う必要がありました。
相手に不法行為によって損害を与えた以上、実際にお金を支払うことによって、損害を回復させる必要があるという考え方でした。

しかし、今回の改正で、民法509条が改正され、相殺できない債務として、①「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」、及び、②「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」と変更されました。

①は、単なる過失ではなく、わざとやった不法行為の損害賠償債務については相殺できない、②は、相手が亡くなったり怪我をした場合の損害賠償債務については、相殺できないという内容です(②については、不法行為と限定がされていないので、債務不履行による損害賠償債務にも適用されます)。

その中で、特にこれまでと比べて違いが出るのは、過失による不法行為で相手の物を壊した場合です。これまでできなかった相殺ができることになります。

具体的には、自動車同士の交通事故で互いに物損のみというケースで、双方に過失がある場合、これまで双方の損害賠償義務は相殺できないため、判決では双方ともに賠償金を支払えという内容になっていました。しかし今後は、当事者が相殺の主張をすれば、相殺した上で、相殺しきれなかった金額のみ、一方が他方へ支払えという判決を出すことが可能になります。

なお、これまでも実務的にはそういったケースでは和解によって相殺処理することが多かったのですが、今後は仮に和解できなかったケースでも、判決で相殺処理できることになりました。

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2021年3月22日

婚姻に関する民法上の諸規定②

今回は、婚姻に関する民法上の諸規定の続きです。残りは氏(うじ)の話です。
項目番号は前回からの続きで(7)から始めます。

(7)氏(うじ)(民法750条、767条)
氏とは名字のことです。結婚すると、夫か妻のどちらかの名字を選択して名乗ることになっています。
今、夫婦別姓が議論されていて、結婚しても夫婦で異なる名字を名乗ってもいいのではないかという議論があります。
現在のところ、日本では、夫婦が別々の名字を名乗ると家族制度上混乱が起きるとか、子どもの名字をどちらにするかという問題が生じるなどの理由から、夫婦別姓は認められていません。したがって、名字を変更した方が、仕事上で婚姻前の名字を名乗りたい場合は、通称として使うしかありません。ただ、夫婦別姓の議論は今も進められていますので、近いうちに変更される可能性があります。
離婚した際、名字を変えた方は、何もしなければ婚姻前の名字に戻ります。
ただ、婚姻中の名字をそのまま名乗りたい場合は、離婚後3か月以内に市役所に届出をすれば、そのまま名乗ることができます。

(8)子の氏(民法790条、791条)
離婚した際、子供の名字はどうなるのでしょうか。
何もしなければ、子供の名字は変わりません。例えば婚姻中、山田という名字だった場合、離婚しても山田です。
子供の戸籍は婚姻中と同じ戸籍に入ったままです。一般的には夫が筆頭者になって戸籍を作っているケースが多いのですが、離婚して妻がその戸籍から出ても、子供はそのままです。母が親権者になっても、子どもが自動的に母の戸籍に入ることはありません。
母親が、婚姻前の名字に戻って、例えば鈴木という名字に戻したとしても、何もしなければ子供は山田のままです。母親が、自分が親権者なので、自分と同じ名字を名乗らないと都合が悪いと考えた場合、子の氏の変更という手続きを家庭裁判所で行います。その上で、母親と子の入った戸籍を新しく作ることになります。

今回で、離婚に関するお話、婚姻に関するお話は一段落です。
相談の多い分野ですので、また機会があれば触れてみたいと思います。

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