2022年9月27日

相続と遺産分割④

今回は、遺言の効力と遺留分についてお話ししたいと思います。

遺言において、遺言者は、自らの財産につき、誰にどのように相続させるといった内容を定めることができます。遺言で書かれた内容は、法定相続分と異なっていてもかまいません。むしろ、通常はそのために作成されるものと思われます。
例えば、相続人として子供が3人おり、長男はとてもよく面倒を見てくれたが、次男と三男は家にも寄り付かず、あまり面倒を見てくれなかった場合、法定相続分どおり3人に平等に相続させることに抵抗があったとします。そのような場合に、長男に多めに相続させ、次男と三男には少なめに相続させる内容で遺言書を作成するといったことは、実際によくあります。

しかし、少しぐらい長男が多い場合は納得できたとしても、例えば全部の財産を長男に相続させるといった遺言書が作成されていた場合、次男と三男は何も言うことができないのでしょうか。
その場合の定めが、遺留分です。
遺留分は、遺産の一定割合について、遺言によっても奪われない権利として保証されているものです。
遺留分の割合として、民法は、原則として相続財産の2分の1と定めており、直系尊属(被相続人の親、またはその親)のみが相続人となる場合は3分の1と定めています。
上記の相続人が子供3人の例で、長男に全ての財産を相続させるという遺言書があったとしても、次男と三男は、それぞれ本来の法定相続分である3分の1のさらに2分の1、すなわち6分の1ずつは、遺留分として保証されます。したがって、全部を相続する長男に対し、それぞれ6分の1ずつ寄こせと請求することができます。
この請求を、遺留分減殺請求といいます。

ただし、
7月12日のブログ
で書きましたが、令和元年7月1日から、民法改正により、それまで遺留分減殺請求とされていたものが、遺留分侵害額請求へと変更されました。
詳しい内容は当該ブログを見ていただくとして、簡単に述べると、それまでは相続財産のうち何割を渡せという請求ができたものが、改正後は、遺留分に相当する金額を金銭で請求するように変更されています。

次回は、遺産分割の具体的な手続についてお話ししたいと思います。

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2022年9月20日

相続と遺産分割③

今回は、遺言についてお話させていただきます。
遺言とは、自分が亡くなった後、自分の財産をこのように分けて欲しいと記載して、生前に意思表示しておくものです。

遺言の種類としては、普通の方式のものとして、3種類あります。
1つ目は自筆証書遺言。2つ目は公正証書遺言。3つ目は秘密証書遺言です。

自筆証書遺言は、遺言者が自分で紙に書いてのこす遺言です。
遺言者が中身の全文と、日付、氏名を自筆で記入し、押印する必要があります。
全文を自筆で書く必要がありますが、例外として、財産目録については、本文を書いた紙と一緒に綴じて、目録のページごとに遺言者が署名・押印すれば、目録自体は自筆でなくてもかまわないとされています。

遺言は、民法で定められた方式を守らないと無効とされています。したがって、自筆証書遺言の場合も、上記のとおり、全文の自筆、日付、氏名の自筆での記入、押印の全てをきちんと行う必要があります。どれか1つでも欠けると、無効とされてしまいます。

公正証書遺言は、公証役場において、公証人に作成してもらう遺言です。公証人とは、ある事実の存在や契約の適法性等について、公に証明する役割の人です。
公正証書遺言を作成する場合は、事前に公証役場へ連絡し、作成したい内容を伝えておきます。証人2人以上の立会いが必要で、公証人が読み上げた遺言書について、遺言者及び証人が間違いないことを確認し、それぞれ署名押印して作成します。作成費用がかかりますが、公正証書のため他の方法より信用性があり、作成するだけのメリットがあります。
具体的には、公正証書以外の遺言については、遺言者の死後、遺言を裁判所へ提出して検認という手続を受ける必要がありますが、公正証書遺言の場合は検認の手続が不要となります。また、公証人が作成したものであるため、後で偽造や変造の疑いを持たれたり、争われる可能性が低いことが挙げられます。

秘密証書遺言は、遺言者が、自分が亡くなるまで内容を秘密にしておきたい場合にとられる方法です。遺言者が遺言内容を記入し、署名・押印した紙を、封筒に入れ、封をして、遺言書に押したものと同じ印鑑で封印します。それを公証人及び証人2人以上の前に提出し、自分の遺言書である旨と氏名・住所を申述します。それに基づき、公証人が提出を受けた日付及び遺言者が申述したことを記入し、公証人、証人、遺言者が封筒に署名押印します。
メリットは誰にも遺言の内容を公開せずに遺言を作成できることですが、デメリットとしては手続が面倒なことが挙げられます。

上記、普通の方式の遺言のほか、特別の方式の遺言もあります。
死亡の危急に迫った際に作成する危急時遺言や、伝染病隔離者などの遺言です。
例えば、危急時遺言は、死亡の危急に迫った者が遺言する場合、証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授し、口授を受けた者がこれを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名・押印して作成するといったものです。
よほど余裕のない場合にとられる方法であり、通常は上記に記載した自筆証書遺言や公正証書遺言の方法をとることになるかと思います。

次回は、このようにして作成された遺言の効力、及び、遺留分について、お話したいと思います。

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