幾波法律事務所 ブログ
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2024-1-23
相続登記の義務化と経過措置について
登記はその不動産を誰が所有しているかを示すものですから、亡くなっているにもかかわらず名義が変更されていないと、現在の本当の所有者が分かりません。
これまでは所有者が亡くなって相続登記をせずに放置していても、特に罰則はありませんでした。その結果、全国で相続登記がされていない不動産が多数存在しています。
近時、放置された空家や相続人不明不動産が問題になっており、その対策として、相続登記が義務化されました。
令和6年4月1日以降は、相続が開始したことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わないと、10万円以下の過料に処せられることになります。
正当な理由があった場合は例外となりますが、正当な理由とは、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合、重病などのために登記申請ができない場合など、かなり限定されています。
よくある遺産分割協議や調停が長引いて誰が不動産を取得するか決まっていないというのは、正当な理由にならないと考えられています。
その場合は、とりあえず、法務局で相続人申告登記というものを申請すればよいとされています。自らが相続人である旨を申し出て、相続人の氏名、住所等を登記に付記してもらう制度のようです。
相続人申告登記は不動産所有についての対抗力を持つものではありませんが、3年以内に相続人申告登記だけでもしておけば、とりあえず過料に処せられないという効果があるようです。
もっとも、今回の改正には経過措置があります。
令和6年4月1日より前に相続が開始していた不動産については、令和6年4月1日以降、3年以内に相続登記をすればよいとされています。
つまり、今現在遺産分割協議中で、相続開始後3年が経過した不動産があったとします。
改正法の施行が令和6年4月1日からなので、4月1日になればすぐに登記をしなければならない、となりそうですが、すでに相続が開始している不動産の全てについて、4月1日に一気に登記申請しなければならないとすると、法務局もパンクしてしまいます。
したがって、経過措置として、すでに相続が開始している不動産については、令和6年4月1日から3年以内、すなわち令和9年3月31日までに相続登記をすればよいことになっています。
インターネット上でも相続登記の義務化に触れている記事やブログはたくさんありますが、3年以内の期限と10万円以下の過料という点が強調され、経過措置について触れているものが案外少ないので、この点についても注意喚起しておきたいと思います。]]>
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2023-12-28
年末年始について
当事務所の営業は、年末は12月28日まで、年始は1月5日からとなります。
来年もよろしくお願い申し上げます。]]>
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2023-10-25
相続における死亡保険金と遺産への持ち戻しについて②
前回のブログにおいて、相続における死亡保険金と遺産への持ち戻しについて、一般論を述べました。
原則として受取人指定の死亡保険金は遺産にカウントされないが、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、死亡保険金を遺産に持ち戻すように命じるのが最高裁判例の考え方です。
その明確な基準は示されていませんが、一般的には、保険金の金額が遺産全体の評価額の半分を超えれば持ち戻しが命じられる可能性が高いと言われています。
ところが、近時、遺産全体の評価より死亡保険金の方が大きい金額にもかかわらず、持ち戻しを否定した、すなわち、死亡保険金を遺産にカウントしなくてよいとした裁判例が出ました(広島高裁令和4年2月25日決定)。
その事案では、遺産分割の対象が預貯金等の459万円(ただしそれ以外に引き出された預貯金313万円あり、使途について争われている)であり、死亡保険金等の金額が2100万円でした。したがって、仮に引き出された預貯金等が残っていたとしても、遺産全体の金額より死亡保険金等の金額の方がはるかに大きい事案です。
法定相続人は被相続人の母親と妻で、死亡保険金等を受け取ったのが妻です。被相続人の母親から、妻に対して、死亡保険金等を遺産へ持ち戻すように求めました。
それぞれの生活状況ですが、被相続人の母親は、被相続人とは長らく別居して生計も別にしており、自身の夫の死亡後、夫の不動産を相続して被相続人以外の子2人と生活していました。
他方、被相続人の妻は、被相続人と長らく同居生活を営んだ上で結婚し、被相続人が死亡するまで専業主婦であり、子がいませんでした。
裁判所の判断は、被相続人と妻との同居期間、婚姻期間、生計の状況などから、本件死亡保険金は被相続人の死後、妻の生活を保障する趣旨のものであること、夫婦間の一般的な生命保険金と比べてさほど高額とはいえないこと、それに対し、被相続人の母は夫から不動産を相続し、子2人と同居していることなどの事情を考慮した上で、不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存するとは認められないとしました。
したがって、死亡保険金の持ち戻しの有無につき、死亡保険金の金額の大きさは重要な要素ではありますが、実際の判断においては、本件のように、金額以外の事情も総合的に考慮した上で、相続人間に不公平が是認できないほどに著しいものかどうかを判断しています。
特に本件は、死亡保険金等の金額が遺産全体の金額と比較してはるかに大きいにもかかわらず、金額以外の要素も含めて総合的に考慮した結果、持ち戻しを否定しています。
事案的にはやや特殊な部類に入るものかと思いますが、興味深い裁判例といえます。]]>
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2023-10-11
相続における死亡保険金と遺産への持ち戻しについて①
例えば父親が亡くなって、兄弟が3人いるにもかかわらず、生命保険の死亡保険金の受取人を長男に指定しているということがあります。
この場合、父親の遺産分割において、兄弟3人の法定相続分は3分の1ずつとなるはずですが、この死亡保険金については原則として遺産分割の対象とはなりません。
すなわち、遺産として預貯金が2700万円あり、死亡保険金が300万円だとすると、全部で3000万円あるように見えますが、遺産分割で遺産としてカウントされるのは、このうち預貯金の2700万円だけとなります。受取人を指定された死亡保険金は、指定された受取人の固有財産とされるため、遺産分割の対象にならないのです(ただし、これは民法上の遺産分割の話であり、税法上はみなし相続財産として相続税の課税対象となります。このあたりのことは税理士にご相談ください)。
したがって、上記の例で言うと、法定相続分に従って遺産分割した場合、取り分は2700万円の3分の1ずつ、すなわち900万円ずつとなり、長男はそれとは別に死亡保険金300万円を受け取ることになります。
ところが、上記のケースで、死亡保険金が300万円ではなく、3000万円だったらどうでしょうか。
遺産としての不動産と預貯金が合計2700万円。死亡保険金が3000万円。こうなると、遺産分割として900万円ずつ受け取り、長男だけ別に死亡保険金3000万円を受け取ることがいかにも不公平に見えます。
さすがにこのようなケースでは、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」として、死亡保険金を特別受益に準じて遺産に持ち戻しなさい(遺産分割の対象としなさい)という最高裁判例が出ています(最高裁平成16年10月29日決定)。
それでは、死亡保険金がどの程度の金額であれば、「不公平が~到底是認することができないほど」といえるのでしょうか。
一般的には、保険金の金額が遺産全体の評価額の半分を超えれば持ち戻しが命じられる可能性が高いと言われています。ただ、今のところ裁判所から明確な基準は示されていません。
さて、この死亡保険金の遺産への持ち戻しについて、興味深い裁判例があります。これについては次回のブログで紹介したいと思います。]]>
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2023-9-21
祖父母から離婚した親に対し孫の面会交流審判を求めることの可否
それでは、親以外の第三者から親権を持った親に対して子の面会交流を求めることはできるのでしょうか。
それに対する判断を示したのが、令和3年3月29日の最高裁決定です。
事案としては、両親A・Bが婚姻中、両親A・Bと子と祖父母(Aの親)が同居していました。しかし、離婚によりAとBが別居し、その後交代で子を監護することになりました。その後、Aが死亡したことにより、子はBが監護することになり、祖父母は子と会えなくなりました。そこで、祖父母からBに対し、子との面会交流について審判を申し立てたというものです。
1審は、父母以外が面会交流の審判を申し立てることはできないと判断しました。
2審は、父母以外の第三者であっても、事実上子を監護してきたなど子との間に父母と同視しうるような親密な関係があり、面会交流を認めることが子の利益にかなうと考えられる場合は、面会交流を認める余地があると判断しました。
最高裁は、1審と同様、父母以外が面会交流の審判を申し立てることはできないと判断しました。
父母以外の家族、特に祖父母などが、父母の離婚により孫と会えなくなったとして、孫との面会交流を求めたいというケースはあるかと思います。
ただ、面会交流申立の根拠規定は、民法766条であり、原則として父母が離婚の際に協議によって定めることとされており、協議が調わないときは家庭裁判所が定めるとされています。つまり、審判の申立権者は、条文上は父母となっており、祖父母は含まれていません。
しかし、学説の中には、上記の2審での判断のように、事実上祖父母が子を監護してきた場合など、父母と同視しうるような親密な関係があるときは、面会交流を認める余地があるのではないかという考えもあり、これまで議論がなされてきました。
そういった問題に対し、最高裁が初めて判断を示した判例になります。
最高裁は、あくまで条文通り、父母以外が審判を申し立てることができないとしました。
その理由としては、父母の間で面会交流をめぐる対立がある中で、さらに祖父母からも面会交流を申し立てることが可能になると、紛争が複雑化して解決が困難になること、また、父母以外の第三者からの面会交流の申立てを認めることは、父母の親権行使の制約にもなることなどが考えられています。
なお、祖父母と子の親との間で話し合いができ、合意のもとに面会交流について定めることは、当然のことながら、否定されていません。したがって、家事調停において、祖父母から子の親に対して面会交流を求め、調停を申し立てることは可能です。
しかし、話し合いがつかなかった場合に、祖父母から裁判所に対して、面会交流を定める審判(裁判所において判断して欲しいという申立)を申し立てることはできないということです。]]>
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2023-8-30
遺言書の検認
遺言書は、遺言の作成者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書いて押印する自筆証書遺言や、公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言などいくつかの種類があります。
そのうち、公正証書遺言以外の遺言については、家庭裁判所で検認という手続が必要です。
(遺言の種類・要件については、以前にも詳しく書いたことがあります。こちらをご参照ください)
検認は、家庭裁判所において、裁判官が遺言書の原本を確認し、間違いなくこの内容で遺言書が存在するということを確認する手続です。
検認手続の際には、法定相続人全員に対して、検認が行われる期日が通知されますので、法定相続人全員に対し、遺言書が存在することが明らかになります。また、通知を受けた法定相続人は期日に出頭して遺言書の内容を見ることができますので、どのような遺言書がのこされているのか、各相続人にとって知ることが可能となります。
そして、検認が終わると、裁判所書記官が、遺言書の原本に検認済の証明書を付けてくれます。したがって、検認済の証明書が付いた遺言書のみが本物であることが分かりますので、遺言書の偽造・変造などを防ぐ意味もあります。
このように、遺言書は検認手続を経て初めて遺言書として使用することができますので、検認を経ていない遺言書の場合、不動産登記や銀行の手続に持参しても、使用できないことになります。
したがって、公正証書遺言以外の遺言書を発見した場合、被相続人の死後、速やかに検認手続を行ってください。
なお、自分に不利な遺言書であっても、隠したり毀損したりした場合、民法上の相続欠格事由にあたり、相続人としての資格を失うおそれがありますので、ご注意ください。
※令和2年7月10日から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まっており、同制度を利用している場合は、検認手続が不要となります。
また、上記で述べたとおり、公正証書遺言の場合、公証役場で作成されたものであることから、検認が不要とされています。
※今回の遺言書の種類に関する話を含め、法定相続人、法定相続分、具体的な遺産分割、遺留分など、過去のブログで相続について順を追って詳しく解説しています。
以下の各ページをご覧ください。
相続と遺産分割①
相続と遺産分割②
相続と遺産分割③
相続と遺産分割④
相続と遺産分割⑤
相続と遺産分割⑥]]>
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2023-7-18
消滅時効と時効の更新(中断)
前回のブログで、消滅時効期間について述べました。その中で、消滅時効とは、一定期間権利を行使しないことで、権利が消滅する制度だと述べました。ここでいう権利を行使するとはどういうことでしょうか。
一般的な言葉の意味から考えると、相手方に対し、「貸金の〇〇円を返してくれ」「〇〇の代金を支払ってくれ」と請求することで権利を行使したことになるように思えます。
しかし、時効期間を止めるための権利行使は、単に「返してくれ」「支払ってくれ」と請求するだけでは不十分です。
単に「返してくれ」「支払ってくれ」と請求することを、民法では「催告」といいます。
催告は、一時的に時効の完成を止めることができますが、催告してから6ヵ月以内に訴訟提起などを行わないと、時効が完成してしまいます。
すなわち、時効の完成を止めるための権利行使は、訴訟提起などの裁判上の請求である必要があります。
このように、訴訟提起によって時効の完成を止めることを、時効の更新といいます。
止められた時効は、再度、その時点から新たに進行を始めます。時効期間がリセットされる形になります。したがって、そこから再び5年間が経過すれば、時効にかかります。
時効をリセットすることを、従来は時効の中断と呼んでいましたが、改正によって時効の更新という言い方に変わりました。リセットによって時効はまた新たに進行を始めるため、ちょうど契約を更新したような形になることから、時効の更新という言い方に変わったものです。
また、裁判所において強制執行の申立てをした場合も、時効は更新されます。
さらに、権利行使とはやや異なりますが、相手方の方から、〇〇の支払義務があることを認めますと述べた場合、債務の承認として、時効が更新されます。債務承認の場合は、後で言った言わないの争いにならないように、口頭で済ませるのではなく、きちんと承認する旨の書面をもらっておくべきです。
なお、上記で、催告することで一時的に時効を止めることができると書きましたが、これは時効の完成猶予といいます。催告してから6カ月以内に訴訟提起などをすることで時効が更新されますが、訴訟提起などをしないと効力が失われるため、あくまでその間の時効完成を猶予するものに過ぎないからです。改正前は時効の停止と呼ばれていましたが、これも完成猶予の方が実態と合っているということで言い方が変わったものです。]]>
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2023-6-23
消滅時効と民法改正
すでに施行から3年ほど経過しましたが、重要なところなので、時効について再度確認しておきたいと思います。
消滅時効とは、一定期間、権利を行使しないことで、権利が消滅する制度です。
なお、一定期間が経過すると自動的に権利が消滅するのではなく、請求された相手方が、「時効なので支払いません」と述べることで、権利が消滅します。この「時効なので支払いません」と述べることを、時効の援用といいます。
従来は、一般的な債権(貸金の請求権、売買代金の請求権など)は、権利行使できる時から10年間で時効となっていました(改正前民法167条1項)。また、短期消滅時効といって、より短い時効期間が定められている債権もありました(医師の診療報酬、工事の設計管理の報酬などは3年、生産者・卸売・小売の商品代金は2年など)。
しかし、改正後は、短期消滅時効は廃止され、債権は原則として「権利を行使することを知った時から5年間行使しないとき」または「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」には時効となることが定められました(民法166条1項)。
また、不法行為に基づく損害賠償請求は、原則として「損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」または「不法行為の時から20年間行使しないとき」と定められています(前者について、人の生命または身体を害する不法行為の場合は知った時から5年間行使しないとき)。
さらに、上記のように時効期間が5年や3年のものであっても、裁判や調停で確定した権利、すなわち確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、時効期間は10年となります(民法169条)。]]>
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2023-5-25
自筆証書遺言の日付について
その自筆証書遺言をめぐり、令和3年に興味深い判決がありました。
遺言者が、入院中の平成27年4月13日に、遺言書の全文、同日の日付、氏名を記入し、退院後の同年5月10日に、弁護士の立会の下、押印したという事例で、それが自筆証書遺言として有効かが争われました。
ぱっと考えて、全文を遺言者が自筆し、日付・氏名も記入されていて、後日ではあるが印鑑も押されているのであれば、有効じゃないかと思えるかもしれません。
しかし、民法上は全文自筆、日付・氏名記入、押印の全てが揃って初めて遺言書として成立すると定めています。
しかも、日付の記入は、その遺言がいつ成立したかを確定させる意味があります。
例えば、高齢で認知症になりかけていて、遺言書を作成した時点で遺言書を作る能力があったのかどうかが争われた場合、遺言書を作成した日付が重要になります。
そういった意味でも、遺言書の作成日付は重要なのですが、本件の遺言書は、書かれた日付と実際に押印された日(すなわち遺言書として要件が整って完成した日)が異なるため、問題となったのです。
この事例において、高裁(名古屋高裁平成30年10月26日判決)は、遺言として無効と判断しました。
しかし、最高裁(令和3年1月18日判決)は、本件遺言書も直ちに無効とはいえないとして、高裁の判断を覆しました。
押印以外の全文自筆から、押印して遺言書が完成するまでの間が1ヵ月に満たないといった事情から、直ちに形式違反として無効としてしまうことは、遺言者の真意の実現を阻害することになるという価値判断が働いたようです。
このように、遺言書の作成については民法上の厳密な要件があり、思いもよらないところで有効無効が争われたりします。
本人が書いているから大丈夫だろうといった判断ではなく、作成の際にはきちんと専門家に相談して判断を仰いでいただければと思います。]]>
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2023-4-27
相続で、亡くなった父親が寄付をしていた場合
ヤフーニュースはこちら
遺族からすると、父親が相続人でもない病院に対し、3億もの寄付をするはずがない、病院がさせたのだろうと考えています。
病院の方は、正当な手続を経て寄付金を受け入れていると主張しています。
このようなケースは、例えば兄弟で相続する場合に、父親が、兄に財産を全部相続させるといった遺言書を作っていた場合にも生じます。
不利な立場の弟としては、そのような遺言書は兄が無理に書かせたのではないかと主張し、遺言が無効であるといった訴えを起こすことがあります。
遺言の場合でも、寄付の場合でも、その時点でお父様が正常な判断能力を持っていたかどうかがポイントになります。
生前に自分の意思で寄付したのであれば、寄付の相手方が病院であろうが、金額が大きかろうが、問題はありません。
しかし、寄付をした時点で認知症などによって正常な判断能力を欠いている状態だったということであれば、本人の正しい意思に基づく寄付ではなく、無効ということになります。
ニュースの事案でも、まさにそこが争われているようです。
加えて、このようなケースでは、そういった寄付をした動機があったかどうかについても争われると思います。
遺言書の場合でも同様で、そのような遺言書を残す動機があったかどうかはポイントになります。
一般的には、父親としては、遺族にお金を遺したいと考えるのが普通であり、他人である病院に対して多額の寄付というのは不自然であると考えることもできます。
しかし、本件では事情は分かりませんが、例えば病院が非常に手厚く面倒を見てくれたことに恩義を感じていた、財産全体の金額が非常に大きく、3億円の寄付をしても遺族に十分な相続分があるといったような事情があれば、3億円もの寄付をしてもおかしくないという動機があると考えることもできます。
したがって、①まずは寄付の手続が適正になされているか、②寄付の手続をした時点で本人の判断能力はどうだったか、③寄付をする動機はあったかといったポイントを中心に、総合的に判断されることになると思われます。
こういったニュースは最終的にどうなったかまでは報道されないことも多いですが、本件はどういう結論になるのか気になりますね。]]>
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2022-12-28
年末年始のご案内
本年も皆様お世話になりました。
来年もよろしくお願い申し上げます。
年末最終営業日:12月28日
年始営業開始日:1月5日]]>
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2022-11-14
訴訟における相手方主張の不当性について
結論から言うと、このようなことは訴訟ではよくあります。
代理人が作成する書面ですが、代理人が策を弄してそう書いているというより、本人がそのように主張しているケースがほとんどです。
代理人としては、事実関係は本人しか分かりませんから、本人に聴き取った上で、整理して書面に書きます。
法的な主張については専門家として構成を組み立てますが、前提となる事実関係は本人に聞くしかありません。
その上で、聴き取った事実関係に矛盾があったり、普通に考えておかしい内容の場合は、改めて本人にそれで間違っていないのか確認しますが、一般的にあり得る内容であれば、本人が言う以上、それを信用して書面を作成するのが普通です。
もっとも、そこで嘘をついてもいいのかというと、そういうことではありません。
双方で言い分が異なる原因は、一般論として、同じ事実を見ていても、立場が違うと見方が異なるし、解釈が違うこともあります。もちろん、勘違いをしているケースや思い込んでいるケースもあります。
こちらが相手方の主張を嘘と思っているように、相手方もこちらの主張を見て、同じように嘘だとかおかしいとか言っている可能性もあります。
さらに言えば、そのようにお互いに言い分が異なるからこそ、訴訟になっているものといえます。お互いが同じ認識の場合は、そもそも揉めることはありません。
訴訟は、お互いに言い分が異なる場合に、裁判官が関係証拠から判断して、どちらの言い分が合理的かを判断するものです。
したがって、最終的に判断するのは裁判官の仕事です。
そのため、相手方から出てきた主張の段階で、明らかな嘘じゃないか、こんな主張が許されるのかと言ってみても、結局それも含めて裁判所が判断することになるため、あまり意味がないのです。
もちろん、最終的に裁判所が下した判断が、社会通念とかけ離れたおかしなものである場合は問題です。
その場合は控訴などで是正する必要があります。]]>
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2022-10-31
訴訟における主張の長さについて
いずれも当事者の主張をまとめた書面になるのですが、依頼者からすれば、自分が依頼した弁護士がどれだけ自分の言いたいことを代弁してくれるか、どれだけたくさん主張してくれるかという部分は、関心のあるところかと思います。
他方で、裁判における主張は、民法や民事訴訟法といった決まりに従って組み立てられています。
裁判での主張は、言い合いやディベートではありません。
そして、裁判における主張の目的は、こちらが望む判決を裁判官に書いてもらうために必要な事実関係の主張を行うことになります。
相手方を言い負かすために出しているものではありません。
したがって、あくまで一般論であり、事案によっては例外もありうるのですが、実は有利な側の主張ほど、短くて済む傾向があります。
法律上当然の主張であったり、事実関係から当然認められるような内容の主張をする場合は、端的にそのことを指摘すれば足ります。
逆に、不利な側ほど、様々な理屈を考えて主張する必要があるため、長くなる傾向があります。
繰り返しますが、あくまで一般論ですので、例外もあります。
ただ、たくさん書いているから相手の主張が通るんじゃないかとか、そういう単純なことではないということですね。]]>
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2022-10-19
公益通報者保護法とは
公益通報者保護法については、何となく名前を聞いたことがあるという人も多いかもしれません。会社の不正行為を内部で知った従業員などが、不正の事実について通報しやすくし、それによって会社の不正行為を事前に防ぎ、ひいては取引先や消費者なども保護するといった目的のために作られた法律です。
もともと2006年4月1日に施行された法律ですが、これまで十分機能してきたとは言い難いところもあったため、2022年6月1日から改正法が施行され、特に従業員数300人を超える企業に対して、内部通報に対応できる体制整備などが義務付けられました。
古くは2007年頃、食品メーカーの賞味期限改ざん、製造年月日改ざんが相次ぎ、2015年にはマンションの免震ゴムの性能が偽装されていた問題などが世間を騒がせました。
ほかにも様々な企業の不正行為がニュースになりましたが、そのほとんどは内部からの通報により発覚したものです。
公益通報者保護法は、そのような内部からの通報を行いやすいように、企業が通報者を特定したり、通報者に対して解雇などの不利益を課さないように定めた法律です。
企業は内部通報に対応するための窓口を作る必要があるほか、通報者の判断により外部窓口である行政機関やマスコミなどへ通報した場合においても、通報者が不利益を受けないよう保護されるための要件などが定めてあります。
当職の下にも、最近、ある企業から公益通報者保護法に関する研修や、体制整備についての依頼ができないかという相談がありました。
当事務所では、公益通報者保護法に関する研修、内部通報規程の作成、通報体制整備、さらには、当職自身が企業の通報窓口となることも含め、対応することが可能です。
公益通報者保護について最近よく聞くが、何から手を付けてよいか分からないといったケースも含め、ぜひお気軽にご相談ください。]]>
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2022-10-11
相続と遺産分割⑥
相続放棄とは、被相続人の法定相続人である者が、相続しない意思を家庭裁判所へ申述する手続です。
家庭裁判所へ申述することが必要ですので、例えば書面に「自分は相続を放棄する」と書いて実印を押したとしても、それだけでは相続放棄したことにはなりません。
遺産分割協議の中で、自分は遺産は受け取らないと記載し、他の相続人が取得する内容に同意する協議書を作成し、押印したとしても、それは単に「自分は遺産を何も受け取らない内容の遺産分割」に過ぎません。
相続放棄とは、初めから被相続人の相続人ではなかったことにする手続です。
「何も受け取らない遺産分割」と、「初めから相続人ではなかったことにする」相続放棄とは、何が違うのでしょうか。
例えば、被相続人が銀行から多額の借金をしていたとします。
相続は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぎます。
したがって、被相続人が持っていた不動産や預貯金を引き継ぐと同時に、被相続人が負っていた借金も引き継ぐことになります。
とすると、相続放棄をしていない場合、遺産を何も受け取らなかったとしても、銀行から、法定相続分に応じた借金の返済を求められることになります。その場合、支払いに応じざるを得ないのです。
しかし、相続放棄をした場合は、相続人ではなかったことになりますから、銀行から被相続人の借金の返済を求められても、支払いに応じる義務はありません。
一般的に、相続放棄は、相続するプラスの財産よりも、相続する負債の方が大きい場合に選択されることが多いものです。
マイナスの方が多いなら、相続しない方がマシというわけですね。
ただし、遺産の一部でも受け取ってしまうと、民法上は相続したものとみなされてしまいます。相続放棄を考えている場合は、遺産には手をつけてはならないということになります。
また、相続放棄は「初めから相続人ではなかったことになる」手続ですから、他の相続人の法定相続分などに影響を及ぼします。
例えば子が3人いて、本来3分の1ずつ相続する場合でも、1人が相続放棄すれば、残りの2人が2分の1ずつ相続することになります。
さらに、配偶者と子がいる場合、普通は配偶者と子が相続人であり、それ以外の者は相続人にはならないのですが、配偶者と子が相続放棄をした場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となることがあります。相続放棄をするような場合は、プラスの財産よりも借金の方が多い場合が普通ですから、ある日突然、亡くなった兄弟の借金の請求が来ることがあります。
その場合は、兄弟姉妹においても、相続放棄を検討する必要が出てきます。
相続放棄は自身の相続を知ってから3か月以内に行う必要があります。したがって、被相続人の借金の請求書などが来た場合は、早急に検討していただく必要があるかと思います。
なお、相続財産の範囲内で負債を弁済する、限定承認という手続もあります。相続する財産の範囲内で負債を弁済するのであれば、特に自分に負担はないし、債権者にも迷惑がかからないなら、限定承認の方がいいのではないかと思われるかもしれません。
しかし、手続自体が相続放棄に比べてはるかに複雑な上に、例えば弁済のために相続財産を売却した代金に税金がかかり、相続した財産の額を超えて税金の支払義務が発生する場合があるなど、制度的にはあまり使い勝手はよくありません。
したがって、実務上はあまり使われていないのが実情です。
以上、6回にわたり、相続と遺産分割の基本的なお話をさせていただきました。当事務所では相続や遺産分割についても数多く扱っております。具体的な事案について気になることがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。]]>
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2022-10-3
相続と遺産分割⑤
遺産分割は、相続人の間で、遺産を具体的にどのように分けるのか決めることです。被相続人が亡くなった場合、普通、遺産として、預貯金、不動産、自動車、有価証券など、様々なものがあります。
それらを相続人のうち誰が、どのように、いくら取得するのかということを決める必要があります。
例えば銀行預金は、名義人が亡くなった場合、相続人の1人が払い戻しの手続を行っても、引き出すことができません。相続人全員が同意している旨の書類に、全員の実印を押印して提出する必要があります。
不動産の相続登記を入れる時も同じです。相続人全員の実印がないと登記が移転できません。
したがって、相続人全員で遺産をどのように分けるのか、協議して決める必要があるのです。
ところで、本ブログの「相続と遺産分割②」において、法定相続分の話をしました。法定相続分が決まっているなら、その通りの内容で預金を引き出したり、登記を移転することは可能なのではないかと思われるかもしれません。
確かに、遺産分割の協議が整わない場合、相続人がそれぞれの法定相続分で相続していると考えることは可能です。
しかし、概念として法定相続分で取得しているということと、具体的な財産ごとにどのように取得するかということは別です。法定相続分はあくまで割合に過ぎないので、どの財産を誰がいくらという内容は協議によって決めざるを得ないのです。
そこで、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことになります。
調停は、裁判とは違い、話し合うための手続です。裁判所において、調停委員が間に入って双方の言い分を聞きながら、具体的な分割方法について話し合って行きます。
その中で、調停委員から、裁判所の考え方なども聞きながら進めることができるため、当事者のみで話し合う場合よりは、話がまとまる可能性が高くなります。
話がまとまれば、裁判所が、その内容を記載した調停調書という書面を作成します。
調停調書は判決と同じ効力を持つ書面ですので、以後の預金引き出しや不動産登記などは、調停調書によって行うことができます。
しかし、調停でも話し合いがつかない場合は、調停が審判に移行し、担当の裁判官が判断することになります。
裁判官が審判で決める場合、原則として、法定相続分での共有という結果になります。
特に、預貯金のように分割可能なものについては、審判によって法定相続分で引き出しが可能になりますが、不動産に関しては、切って分けることができないので(現実には1つの土地を文字通り切って分ける方法もありますが、その場合は「切り方」について協議を整えた上で、土地家屋調査士によって境界を定めてもらい、分筆登記を入れる必要があります)、1つの土地を相続人全員で共有するといった形になります。
共有状態を解消するためには、共有物分割請求というまた別の手続が必要となります。
なお、遺言書がある場合、原則は遺言書に従って分割しますが、相続人全員が同意すれば、遺言書と異なる内容で遺産分割を行ってもかまわないとされています。
次回は、相続放棄についてお話したいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1664247140-648743
2022-9-27
相続と遺産分割④
遺言において、遺言者は、自らの財産につき、誰にどのように相続させるといった内容を定めることができます。遺言で書かれた内容は、法定相続分と異なっていてもかまいません。むしろ、通常はそのために作成されるものと思われます。
例えば、相続人として子供が3人おり、長男はとてもよく面倒を見てくれたが、次男と三男は家にも寄り付かず、あまり面倒を見てくれなかった場合、法定相続分どおり3人に平等に相続させることに抵抗があったとします。そのような場合に、長男に多めに相続させ、次男と三男には少なめに相続させる内容で遺言書を作成するといったことは、実際によくあります。
しかし、少しぐらい長男が多い場合は納得できたとしても、例えば全部の財産を長男に相続させるといった遺言書が作成されていた場合、次男と三男は何も言うことができないのでしょうか。
その場合の定めが、遺留分です。
遺留分は、遺産の一定割合について、遺言によっても奪われない権利として保証されているものです。
遺留分の割合として、民法は、原則として相続財産の2分の1と定めており、直系尊属(被相続人の親、またはその親)のみが相続人となる場合は3分の1と定めています。
上記の相続人が子供3人の例で、長男に全ての財産を相続させるという遺言書があったとしても、次男と三男は、それぞれ本来の法定相続分である3分の1のさらに2分の1、すなわち6分の1ずつは、遺留分として保証されます。したがって、全部を相続する長男に対し、それぞれ6分の1ずつ寄こせと請求することができます。
この請求を、遺留分減殺請求といいます。
ただし、
7月12日のブログ
で書きましたが、令和元年7月1日から、民法改正により、それまで遺留分減殺請求とされていたものが、遺留分侵害額請求へと変更されました。
詳しい内容は当該ブログを見ていただくとして、簡単に述べると、それまでは相続財産のうち何割を渡せという請求ができたものが、改正後は、遺留分に相当する金額を金銭で請求するように変更されています。
次回は、遺産分割の具体的な手続についてお話ししたいと思います。]]>
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2022-9-20
相続と遺産分割③
遺言とは、自分が亡くなった後、自分の財産をこのように分けて欲しいと記載して、生前に意思表示しておくものです。
遺言の種類としては、普通の方式のものとして、3種類あります。
1つ目は自筆証書遺言。2つ目は公正証書遺言。3つ目は秘密証書遺言です。
自筆証書遺言は、遺言者が自分で紙に書いてのこす遺言です。
遺言者が中身の全文と、日付、氏名を自筆で記入し、押印する必要があります。
全文を自筆で書く必要がありますが、例外として、財産目録については、本文を書いた紙と一緒に綴じて、目録のページごとに遺言者が署名・押印すれば、目録自体は自筆でなくてもかまわないとされています。
遺言は、民法で定められた方式を守らないと無効とされています。したがって、自筆証書遺言の場合も、上記のとおり、全文の自筆、日付、氏名の自筆での記入、押印の全てをきちんと行う必要があります。どれか1つでも欠けると、無効とされてしまいます。
公正証書遺言は、公証役場において、公証人に作成してもらう遺言です。公証人とは、ある事実の存在や契約の適法性等について、公に証明する役割の人です。
公正証書遺言を作成する場合は、事前に公証役場へ連絡し、作成したい内容を伝えておきます。証人2人以上の立会いが必要で、公証人が読み上げた遺言書について、遺言者及び証人が間違いないことを確認し、それぞれ署名押印して作成します。作成費用がかかりますが、公正証書のため他の方法より信用性があり、作成するだけのメリットがあります。
具体的には、公正証書以外の遺言については、遺言者の死後、遺言を裁判所へ提出して検認という手続を受ける必要がありますが、公正証書遺言の場合は検認の手続が不要となります。また、公証人が作成したものであるため、後で偽造や変造の疑いを持たれたり、争われる可能性が低いことが挙げられます。
秘密証書遺言は、遺言者が、自分が亡くなるまで内容を秘密にしておきたい場合にとられる方法です。遺言者が遺言内容を記入し、署名・押印した紙を、封筒に入れ、封をして、遺言書に押したものと同じ印鑑で封印します。それを公証人及び証人2人以上の前に提出し、自分の遺言書である旨と氏名・住所を申述します。それに基づき、公証人が提出を受けた日付及び遺言者が申述したことを記入し、公証人、証人、遺言者が封筒に署名押印します。
メリットは誰にも遺言の内容を公開せずに遺言を作成できることですが、デメリットとしては手続が面倒なことが挙げられます。
上記、普通の方式の遺言のほか、特別の方式の遺言もあります。
死亡の危急に迫った際に作成する危急時遺言や、伝染病隔離者などの遺言です。
例えば、危急時遺言は、死亡の危急に迫った者が遺言する場合、証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授し、口授を受けた者がこれを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名・押印して作成するといったものです。
よほど余裕のない場合にとられる方法であり、通常は上記に記載した自筆証書遺言や公正証書遺言の方法をとることになるかと思います。
次回は、このようにして作成された遺言の効力、及び、遺留分について、お話したいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1662981176-976547
2022-9-12
相続と遺産分割②
前回は相続の開始と相続人についてお話ししました。
今回は、各相続人の法定相続分についてお話したいと思います。
まず、相続人が配偶者と子の場合、相続分はそれぞれ2分の1となります。配偶者がおり、子がおらず、被相続人の親が生きている場合は、配偶者が3分の2、親が3分の1となります。配偶者がおり、子も親もおらず、被相続人の兄弟姉妹がいる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。配偶者しかおらず、子も親も兄弟姉妹もいない場合は、配偶者が全て相続します。
ここで、法定相続分と言っているのは、民法で規定された相続分の割合のことです。民法が原則としてこの割合で分けましょうと言っているものです。
しかし、遺産分割協議において、相続人の間で違う割合を決めた場合は、それでもかまいません。例えば、相続人が配偶者と子2人の場合、普通は配偶者が2分の1、子が1人4分の1ずつとなりますが、全員が3分の1ずつとしてもいいですし、子の1人が全部という決め方でもかまいません。相続人が全員で同意すれば決め方は自由です。
また、前回お話しした代襲相続の場合、つまり、孫がいるが、子が被相続人より先に亡くなっている場合はどのようになるでしょうか。
先に亡くなっている子が相続すべきであった分は、その子である孫が直接相続しますが、その法定相続分は、本来相続すべきであった子の相続分となります。
具体的には、被相続人に配偶者と子が2人(兄、妹)いたが、子のうち兄の方が被相続人より先に亡くなっており、亡くなった兄にはその子(孫)が2人いるというケースで考えてみます。
本来、兄が亡くなっていなければ、配偶者2分の1、兄4分の1、妹4分の1となります。しかし、兄が亡くなっているため、兄の相続分である4分の1は、その子である孫2人が相続します。したがって、孫が2人で4分の1を相続しますから、孫1人につき8分の1ずつということになります。
このあたりは、文章で書くと複雑に感じますが、相続関係図を書いて図で順を追って見て行くと、案外理解できるかと思います。
次回は、遺言についてお話ししたいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1662031724-448695
2022-9-1
相続と遺産分割①
今回から、何回かに分けて、相続と遺産分割について、基本的な話をしたいと思います。
まず、相続はいつ発生するのでしょうか。
この点、相続は、被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。
相続の放棄や遺産分割は、相続が開始していることが前提となりますから、被相続人の死後に行わなければならず、被相続人の生前に相続放棄や遺産分割の手続をしても、無効となります。
もちろん、正式な相続放棄や遺産分割は被相続人の死後に行うことにして、被相続人の生前に相続人の間で遺産分割の方法などについて協議しておくことはかまいません。遺産が多岐にわたり、また、被相続人が会社の経営などにも関与していた場合は、事前にある程度決めておいた方がスムーズな場合もあります。
もっとも、正式な手続としては、被相続人の死後でないと行えないということになります。
次に、相続人になれる者は誰でしょうか。
被相続人の配偶者は、必ず相続人となります。
過去に配偶者であった者、つまり、離婚した配偶者は相続人にはなりません。
子は必ず相続人となります。離婚した配偶者との間の子で、離婚後は会っていないようなケースであっても、被相続人の子である以上は相続人となります。
孫がいる場合で、子が被相続人より先に亡くなっている場合、孫が相続人となります。これを代襲相続といいます。
子も孫もいないが、被相続人の親がまだ生きている場合は、親が相続人となります。
親も亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
次回は、これらの相続人の法定相続分についてお話したいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1657604828-474454
2022-7-12
遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ
遺留分とは、相続において、被相続人がほかの相続人へ全て相続させるような遺言を遺したとしても、奪われない相続分のことです。
例えば、遺産として土地と預貯金があったとします。
土地の評価額が2000万円、預貯金が1000万円だとすると、合計3000万円の遺産があることになります。
法定相続人が、被相続人の子2人、例えば兄と弟だとすると、本来の法定相続分は2分の1ずつですから、普通に遺産分割を行うと、兄と弟で遺産のうちの1500万円分ずつを分けるというのが原則です。
しかし、ここで被相続人が、兄に遺産の全部を相続させる遺言を遺していたとします。
その場合、弟は何も取得できないように見えますが、民法上は、遺留分として、本来の法定相続分の半分が保証されています。
したがって、この例でいうと、本来の法定相続分1500万円分のうち、半分にあたる750万円分を取得することができます。これが遺留分です。
そして、従来は、遺留分減殺請求として、遺言で全部を取得した兄に対して、遺産のうち750万円分を渡せという請求をしていました。
その場合、不動産の一部を渡してもいいし、預貯金の一部を渡してもいいし、遺産のうちから750万円分を何らかの形で渡すことになっていました。
ところが、令和元年7月1日から、遺留分侵害額請求という方法に変更されました。
これは、遺産のうちから遺留分に相当する分を渡すのではなく、遺産は遺言どおり指定された相続人が全部取得した上で、遺留分にあたる金額を、金銭で渡すというものです。
上の例でいうと、兄が土地も預貯金も全て取得した上で、弟に対し、遺留分に相当する750万円を、金銭で支払うことになります。
もっとも、話し合いでそれと異なる方法で合意することは自由ですから、従前のように、不動産や預貯金の一部を渡すことで兄弟で合意できるなら、そういった方法で行ってもかまいません。
しかし、話し合いで合意できなかった場合、裁判所に訴えて、そこでも和解の話し合いがまとまらず、判決をもらう場合は、金銭での支払いが命じられることになります。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1655196682-521186
2022-6-14
義務者が仕事を辞めた場合、養育費は減額されるか
したがって、離婚後の子の親権をどちらが持つかどうかに関係なく、父母双方で子の養育費を負担する必要があります。
個々のケースにおいて、父母のそれぞれがいくらの養育費を負担すべきかは、子供の人数、年齢、父母双方の収入に応じて決められます。その際の基準として、算定表という表があります。
算定表を見ると、父母双方の収入に応じて、いくらの養育費が相当であるか、一目で分かるようになっています。
あくまで、双方の収入が大きなポイントになります。
子供が小さい場合、母親は子育てのために仕事を辞めているケースも多く、収入が少ないことが多いのに対し、父親の方は、正社員として勤務し、それなりの収入があることが多いです。そのため、一般的には、父親から母親に対し、毎月一定額の養育費を支払うケースが多いかと思います。
ところが、養育費を支払いたくないと考えた父親が、双方の収入で養育費の額が決まることを悪用し、離婚が決まったとたん、仕事を辞めてしまったとします。
そうすると、収入は0になるので、養育費は支払わなくてよい…ということになるのでしょうか。
実は、そうはなりません。
本当に働けなくなったり、職場が倒産するなどして収入を失った場合は、養育費の算定に影響しますが、働けるにもかかわらず、養育費を払いたくないために仕事を辞めた場合は、辞める前の収入を基準として養育費が算定されます。
その意味では、裁判所は現実の収入よりも、本人の稼働能力を重視していると言えます。つまり、本来自分が持っている能力をきちんと使えば、このぐらい稼げるはずだということです。
したがって、自分から職を手放しても、養育費の算定では有利にはならないので、そういったことはなさらないようにお願いします。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1653371004-649248
2022-5-24
誤送金問題における弁護士費用について
しかし、これは訴訟上の弁護士費用について誤解したものであり、特に週刊誌がこのような記事を掲載していることに驚きました。
まず、担当弁護士本人が説明しているように、これはあくまで訴訟上の請求金額であって、実際に町から担当弁護士に支払われる弁護士報酬とは別のものです。
一般的に、不法行為に基づく損害賠償請求では、裁判所は損害額の1割を弁護士費用として認定します。本件は、たまたま振り込まれた金銭を使ったという意味では、本来的には不当利得返還請求になるのですが、相手方がわざと使い込んで返金しなかったことから、不法行為の損害賠償として訴えたものと思います。
不当利得であれば、弁護士費用の請求ができませんが、不法行為であれば、弁護士費用として1割が認められます。
したがって、本件もそれに従って訴えを提起しただけであり、それを指して、弁護士がぼったくりというのは、的を外した指摘ということになります。
また、この弁護士が実際にいくらもらうのかは知りませんが、当然弁護士の費用はタダではありませんから、今回の依頼に関して、町から担当弁護士にはいくらか支払われるはずです。
仮にそれが400万円だったとしても、町から支出する場合、税金が原資になります。
しかし、このような訴訟を提起する必要があるのは、相手方が使い込んだからではないかと考えれば、相手方に負担させるべきという考えが出てきてもおかしくはありません。
そこで、相手方に弁護士費用として請求すれば、町は弁護士に支払った分を取り戻すことができます。
したがって、担当弁護士が相手方への請求に1割の弁護士費用を加えているのは、むしろ町のためと言ってよいかと思います。
皆さんも、自分が弁護士に依頼する時のことを考えて戴ければ想像がつくかと思います。相手方がお金を払わない、それに対して弁護士を頼んで訴訟をしなければならない、その場合、弁護士の費用は相手方に請求できないのですかという質問はよく受けます。
一般的には、相手方に弁護士費用は請求できないので、相手方から全額回収できたとしても、弁護士に依頼した分の費用は自己負担ということになります。
しかし、上記のとおり、不法行為で訴訟提起する場合、相手方に1割を加えて請求することができるので、実際の弁護士費用のうち、全部または一部を相手方から徴収することができる可能性が出てくるわけです。
したがって、本件の訴訟上の請求金額を見て、この弁護士がぼったくりではないかという記事は、事案を全く理解していない記事だということになります。
一般の方々は、弁護士に依頼することなどほとんど経験がないと思いますし、弁護士費用が500万円という数字だけを見て、そんなにもらうの?といったコメントをしても、やむを得ないところはあるかと思います。
しかし、れっきとした週刊誌が、そういった内容の記事を掲載しているのは、ほかの記事も含めてどこまで理解して書いているのか、信用性に関わると思うので、上はちゃんとチェックしていないのだろうかと思った次第です。
※なお念のため、仮に本件の担当弁護士の報酬が500万円であっても、約5000万円を回収する訴訟であることを考えると、金額的には相場の範囲内であることも付言しておきます。
また、これも実際の契約を見ないと分かりませんが、一般的に弁護士は着手の段階で一定の着手金を受け取り、あとは回収できた金額に応じて報酬を受け取ることが多いと思いますので、仮に本件の担当弁護士の報酬が500万円であったとしても、訴えただけで(回収できていない段階で)500万円全額を受け取れるわけではないものと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1651069725-404503
2022-4-27
成人年齢引き下げと親権・養育費の終期について
http://www.ikunami-law.com/blog/d20220317/
それに伴い、従前は子どもが20歳になるまで親が子どもの親権を持ちましたが、今後は子どもが18歳になると、親権が終了することになります。
しかし、離婚の際の養育費は、必ずしも18歳で終了するわけではありません。
養育費は、経済的に自立していない「未成熟子」に対して支払われるため、子どもが経済的に自立する時期がいつかが問題となります。
これまでも、養育費の終期は成人する20歳までを原則としながら、大学進学を前提に、大学を卒業する年齢までの間、養育費を支払うケースも多くなっていました。
したがって、今後、養育費を決める際に、今回の成人年齢の引き下げによって成人が18歳になったとしても、大学進学率や一般的な就職年齢が突然変わるわけではありませんので、養育費の終期については、これまでと同じく、20歳または大学を卒業する年齢までという扱いは変わらないものと考えられます。
では、すでに、養育費について取り決めがなされており、「子が〇〇歳まで支払う」といった決め方ではなく、「子が成年に達するまで養育費を支払う」といった取り決めがされている場合、終期はいつになるでしょうか。従前は「成年=20歳」だったことから、20歳になるまで支払うという意味でしたが、今回の成人年齢引き下げによって、18歳までに変更されるのでしょうか。
その点、法務省のHPにおいて、今回の成人年齢引き下げの影響を受けず、取り決めの当時、成年=20歳であったことから、従前どおり20歳まで支払義務を負うことになると考えられると記載されています。
(リンク)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00230.html
したがって、すでに養育費の取り決めをしている場合でも、これから養育費の取り決めをする場合でも、いずれにおいても、終期は20歳または大学を卒業する年齢までとすることで、今後も変わりはないものと考えられます。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1650291472-078918
2022-4-15
慰謝料は誰がもらえるのか
先日も、某女性タレントが、以前離婚した元夫に対し、「本来は慰謝料をもらえる立場だった」とSNSで発信したことで話題となりました。しかし、同発言に対する世間の反応は、むしろ批判的なものが多かったようです。
では、離婚の際の慰謝料とは、どういう場合に発生するのでしょうか。
慰謝料という言葉の意味は、精神的苦痛に対する慰謝としての損害賠償です。
民法上、相手方の故意または過失により、法的に保護される利益を侵害された場合に、損害賠償請求ができます。
いわゆる不法行為に基づく損害賠償請求です。
その中でも、利益侵害の内容が精神的苦痛の場合、その損害賠償請求を慰謝料請求といいます。
したがって、相手方に慰謝料を請求するには、少なくとも相手方に不法行為がなければなりません。
離婚の際の不法行為としてあげられる代表的なものは、不貞行為とDVです。
したがって、相手方に不貞行為があったり、DVがあったような場合は、相手方に慰謝料を請求できるということになります。
逆に、相手方に不貞行為やDVなどの不法行為がない場合は、慰謝料請求は認められないものとなります。
上記女性タレントの発言も、自分が慰謝料をもらえる立場だったということは、暗に、相手方に不法行為があったと言っていることになります。
一般的に、離婚に際して女性の側が金銭的な請求をすることが多いため、離婚により女性側が当然に慰謝料を請求できると誤解されている方もおられるように思われます。
確かに、離婚に際して子供が幼い場合、女性の側が親権を持つことが多く、また、収入についても女性の側が少ないことが多いため、女性の側から養育費等の金銭的な請求をすることが多いかと思います。
また、婚姻時の不動産や預貯金などにつき、夫側の名義にしていることも多いため、財産分与においても、女性の側から請求することが多いように思います。
しかし、それらの問題と、「慰謝料」の問題は、明確に異なる問題ですので、混同されないようにご注意ください。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1647587818-963047
2022-3-17
成人年齢の引き下げについて
従前の民法は20歳をもって成年とすると定めており、20歳未満の者は未成年者とされていました。
未成年者が法律行為をするには、法定代理人(親)の同意が必要で、親の同意がない法律行為は原則として取り消すことができました(小遣いでの買い物など、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産の処分など、一部例外あり)。
したがって、これまで例えば車やバイクの購入などのように高額な商品の売買契約については、20歳未満の者が単独で行うことができず、基本的に親の同意が必要でした。
また、20歳未満の大学生が一人暮らしにあたりマンションやアパートを借りる際の賃貸借契約においても、親の同意が必要でした。
ところが、今回成人年齢が18歳になることから、18歳になれば、車やバイクなどの高額商品の購入についても単独でできるようになりますし、マンションやアパートを借りる際の賃貸借契約についても単独でできるようになります。
もっとも、実際問題として、18歳の学生に定まった収入があったり、多くの財産を持っていることは期待できないため、契約の際に相手方から親の保証を求められることはあり得ると思います。
逆に、これまでは、18歳の者が親の同意なく単独で高額商品の契約をしてしまった場合、後から、未成年であることのみを理由に取り消すことができましたが、今後は、法律上有効な契約として、取り消すことができなくなります(相手方から騙されて契約したなどの場合は、もちろん取り消せますが、18歳の場合、未成年者がした契約という理由では取り消せなくなるということです)。
したがって、18歳や19歳で、まだ十分に社会経験がない場合に、うっかり高額の契約を締結してしまい、多額の負債を負うことがないよう、十分に注意していただきたいと思います。
また、これまでは結婚できる年齢が男性18歳、女性16歳とされており、未成年者であっても民法上は結婚することができました。
しかし、今回の改正で、女性も男性と同様に18歳から結婚できることとなり、男女ともに18歳にならないと結婚できないことになりました。
この点に関して、これまでは18歳は未成年者だったので、未成年でも結婚すれば成人と同様、親の同意なく法律行為ができる旨の規定が置かれていたのですが、今後は18歳は成人となりますので、そもそも結婚しているか否かにかかわりなく、18歳になれば親の同意なく法律行為ができることになります。
なお、私の2021年3月19日付ブログ
http://www.ikunami-law.com/blog/d20210319/
において、結婚できる年齢について触れていましたが、上記のとおり、今回の改正により変更されています。
その他、民法より先に公職選挙法等の一部改正がなされ、平成28年6月19日の後に初めて行われる国政選挙の公示日以後にその期日を公示または告示される選挙から、選挙権年齢が18歳以上になっています。
こちらはすでに1度衆議院議員選挙も行われておりますので、皆さんもご存じかと思います。
また、今回の成人年齢引き下げにあたり、影響のないものもあります。
お酒を飲んだりたばこを吸ってもいい年齢は、従前どおり20歳からです。心身の健康のための規定ですので、今回の引き下げにより影響はありません。
パチンコができる年齢については、従前より18歳から(但し高校生は除く)となっています。
競輪、競馬、ボートレースなどの公営競技については、従前どおり20歳からです。
運転免許は、原付・小型二輪・普通二輪は16歳から、普通自動車、大型二輪などは18歳からとなっています。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1643878171-721414
2022-2-3
ギャンブルと免責について
しかし、自己破産との関係で言えば、パチンコや競馬などのギャンブルは、破産法上の免責不許可事由にあたります。免責というのは、借金の支払を免除する決定のことですから、免責が不許可になるということは、せっかく破産申立てを行っても、借金の支払義務が無くならないということです。
破産法252条1項4号は「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」を免責不許可事由としています。
つまり、ギャンブルによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担した場合は、免責許可の決定をしないと定められています。
ここでは「著しく財産を減少させ」又は「過大な債務を負担」とあるため、相当ギャンブルにのめり込んで財産を失った場合のことではないのかと思われるかもしれませんが、破産申立をするぐらいですから、一般的には預貯金などの財産がほとんどなく、手持ちの財産では借金の返済が不可能になっている状態にあると思います。そういった状態でギャンブルを行っていること自体、「著しく財産を減少させ」又は「過大な債務を負担」にあたると判断されてしまいます。
もっとも、破産法252条2項は「前項の規定にかかわらず~破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」と定めています。
すなわち、ギャンブルによる浪費があった場合でも、破産に至った経緯など一切の事情を考慮して、免責を許可することもできると規定されています。
では、どういう場合であれば免責が許可されるのでしょうか。
例えば、破産に至った直接の原因が、勤務先会社の倒産により職を失った場合や、突然の病気・怪我で働くことができなくなった場合などで、ギャンブルが直接の原因になっていない場合が考えられます。ギャンブルの金額にもよりますが、もともときちんとした収入があって、ギャンブルは毎月の小遣い程度の金額で楽しんでいた場合であれば、破産に至った経緯から見て、免責される可能性は十分にあります。
もちろん、ギャンブルを続けながら借金を免除してくれというのは通りませんから、ギャンブルはやめてもらう必要があります。その上で、裁判所に対して反省文を出し、ギャンブルはもう行わないことを約束してもらった場合は、裁判所としても、経済的にやり直すチャンスを与えるべく、免責を許可するということになります。
では、破産に至った直接の原因がギャンブルにある場合はどうでしょうか。給料の大半をギャンブルに充てていたり、借入のほとんどがギャンブルに消えているような場合です。ギャンブルをしていなければ借金は全部返せたんじゃないかという場合も同じです。
そのようなケースでは、簡単には免責許可は出ません。
しかし、本人が、もうギャンブルはやめて、きちんと収入の範囲内で生活をしたいと決意しているにもかかわらず、やり直すチャンスが全く与えられないというのも、破産法の趣旨に沿いません。
一般的には裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人の指導の下、毎月の家計収支表や通帳の写しを提出するなどして、もうギャンブルを行っていないことを証明する必要があります。
破産管財人から浪費を無くすよう、お金の使い方について指導がなされることもあります。
これまでに浪費した金額があまりに大きい場合は、一定の金額を破産財団に組み入れる(破産管財人に対し支払い、配当の原資とする)よう指導されることもあります。
そういった破産管財人の監督の下、破産管財人からこの人は今後はきちんと生活ができる見込みがあると認められた段階で、破産手続が終了し、裁判所から免責決定が出ることが多いかと思われます。
なお、1番よくないのは、浪費など自分にとって不利な内容があるからといって、隠して破産を申立てることです。
破産にあたり、裁判所または破産管財人は、申立人の預金や保険など、あらゆる財産につき報告義務を課し、調査します。
その中で、仮に虚偽の内容が見つかった場合、非常に不利な立場になります。
破産法252条1項では、財産状況に関する書類等を隠滅したり偽造したりすること(6号)、虚偽の債権者名簿を作成すること(7号)、裁判所の調査に対し説明を拒み又は虚偽の説明をしたこと(8号)について、免責不許可事由としています。
裁判所は、嘘の説明については非常に厳しい態度をとります。
逆に、不利な内容があっても、正直に申し出て、反省し、現在は態度を改めていることを証明すれば、最終的には免責決定を出してくれることがほとんどです。
実際に裁判所において免責が不許可になった事例を見ると、裁判所に対してきちんとした説明をしなかったり、指示に従わなかったり、浪費がやまなかったりした場合など、普通に考えるとやり直す気持ちがないと思われても仕方がないようなものがほとんどです。
結論として、パチンコや競馬などのギャンブルを行っていても、かなりのケースにおいて、免責を得ることができています。
ただし、そのためには、自己破産の制度について、単に借金が消えてラッキーというものではなく、あくまで今の生活を改めて、経済的にやり直すための機会を与えてくれるチャンスだという認識を持って、誠実に取り組んでいただければと思います。]]>
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2022-1-27
民法改正と不法行為の損害賠償請求権の時効について
債権とは、契約など何らかの法律的な関係に基づいて、ある人からある人へ請求できる権利のことをいいます。
一般的には、お金を貸したにもかかわらず返してくれない、物を売ったにもかかわらず代金を支払ってくれないといった、いわゆる債務不履行の場合が想定されます。
そのようなケースでは、お互いに何らかの約束があり、それが守られないという形になっています。
ところが、それとは異なり、交通事故のように、お互いに何らの約束がないところに、債権債務が発生することもあります。
その場合について、民法は不法行為による損害賠償請求権として定めています。
交通事故に限らず、人から殴られた、物を盗まれたといった、一般的に犯罪行為になるようなケースは不法行為にあたります。
不法行為の損害賠償請求権については、前回述べた債権の消滅時効とは別に定めがあり、従前から、①損害及び加害者を知った時から3年、または、②不法行為の時から20年と定められています(民法724条)。
つまり、損害及び加害者を知った時から3年で損害賠償請求権が時効にかかるとされています。
ところが、令和2年4月1日に施行された民法の改正により、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、上記①について、損害及び加害者を知った時から5年となりました(民法724条の2)。
ここでいう「人の生命又は身体を害する不法行為」とは、例えば交通事故の人身事故や、傷害事件などです。
これら人の生命又は身体を害する不法行為については、損害及び加害者を知った時から3年だった時効期間が、5年に延びたのです。
(なお、724条後段も、不法行為の時から20年とされていたものが、20年間行使しないときと、微妙に変更されています)
しかも、通常は、新しく施行された法律の適用は、施行日以降の事件に適用されますので、令和2年4月1日施行の場合、新しい時効期間は、令和2年4月1日より後の不法行為について適用されるように思われます。
ところが、これについては改正時に附則が付けられています。
附則35条2項によると、「新法724条の2の規定は、不法行為による損害賠償請求権の~時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合には適用しない」と規定されています。
つまり、令和2年4月1日の時点で時効にかかっていない、人の生命身体に対する不法行為については、時効期間が5年になるということです。
具体的にいうと、例えば平成30年4月1日に人の生命身体に対する不法行為があり、損害と加害者をすぐに知った場合、時効にかかるのは、従前の民法では3年後の令和3年4月1日でしたが、今回の改正によると、5年後の令和5年4月1日になるということです。
この例の場合、従前の民法では、今(令和4年1月27日)から訴訟を提起しようとしても、すでに消滅時効にかかっていることになりますが、改正によって、今からでも訴訟提起ができることになりました。
民法は長年改正されていなかったので、不法行為の時効は全て3年と思い込んでいる方もおられるかもしれませんが、今回の改正により、5年に延びた部分もあることを知っておいていただければと思います。]]>
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2022-1-25
民法改正と消滅時効期間について
その中で大きな改正として、時効期間に関する改正がありました。
従前の民法は、債権の消滅時効について、時効期間を基本的には10年としつつ、内容によって5年(商事債権等)、3年(工事請負代金等)、2年(賃金請求権等)、1年(宿泊の代金等)などと細かく分けていました。
改正によって、それらが統一され、債権の種類を問わず、時効期間は、①権利を行使することができることを知った時から5年、または、②権利を行使することができる時から10年、となりました(民法166条1項)。
なお、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、上記②について、20年と修正されています(民法167条)。
したがって、令和2年4月1日以降に発生する債権について、消滅時効期間は、上記のとおり、権利行使できることを知った時から5年、または、権利行使できる時から10年(人の生命身体の侵害による損害賠償請求権は20年)となります。
ちなみに、労働基準法115条によると、賃金の請求権の時効は2年と定められていました。従前の民法において賃金請求権の時効期間が2年だったことに基づくものですが、民法が5年に改正されたことを受け、労働基準法115条の賃金請求権の消滅時効についても、5年に延長されることとなりました。
ただし、経過措置として、当分の間は3年とされています。
不法行為に関する損害賠償請求権については、別途消滅時効期間が定められていますので、次回は不法行為の時効期間について触れたいと思います。]]>
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2021-12-16
引っ越し見積もりの引越し侍にて記事監修させていただきました。
引っ越し見積もりの引越し侍にて記事監修させていただきました。
記事の内容は同棲解消で引越しする場合に各種費用はどちらが持つべき?というものです。よろしければクリックしてご覧ください。]]>
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2021-12-10
就職活動における学歴採用について
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6411777
昔は学歴が就職に影響することは公然の事実でした。
いつからか、採用時に学歴を基準にすると表立って公表することが控えられるようになりました。
確かに、職種によっては、学歴よりも体力が必要であったり、他人とのコミュニケーション能力が重視される仕事もあるため、学歴が絶対の基準となるわけではないと思います。
しかし、一般的には、学生の能力を判断する基準として、学歴やスポーツなどの実績というのは分かりやすいものです。
逆に、人柄やコミュニケーション能力などは、数回の面接ではなかなか判断しづらいところがあります。
したがって、実際のところ、今でも就職に学歴は影響していると思います。ただ、表立って言えなくなっているだけです。
そうなると、表立って言っていた頃よりも、採用側・応募側双方にとって、非効率的なことが起こります。
はじめから採用の可能性がないのに、分からないために応募してくる学生、それに対して付き合う採用側。双方にとって無駄が生じてしまいます。
私が就職活動を行った頃、今から30年近く前ですが、実は本当のライバルは他大学の人ではなく、同じ大学の人だということを教えてもらいました。
どういうことかと言うと、普通、就職活動において、自分より上の大学の人が一緒の面接になったらどうしようとか、自分よりいい大学の人がたくさん応募したら自分の入れる枠が無くなるのではないかと考えがちです。
しかし、当時、ほとんどの企業、特に大企業は、各大学の学生を何人ずつ採用するかといった内訳をほぼ決めていました。それは、社内の人間の構成を変えないためであったり、各大学の就職課とのつながりであったりと、様々な理由があるのでしょうが、結論として、毎年この大学からは5人程度、この大学からは3人程度、これ以下の大学からはまとめて何人程度などと決めていることが多かったのです。
実際に、当時、私が自分の通っていた大学の就職課で毎年の就職先の人数を見たところ、毎年、企業ごとに採用される人数がほぼ一定でした。
つまり、自分の大学より上の大学の人が同じ会社の面接に現れたとしても、はじめから別枠なのです。
したがって、同じ会社を目指す同じ大学の人間がライバルということになるのです。
また、そのようにレベル別に各大学から何人という採用をする場合、当然ですが、例えば東大枠で採用された人と、その他大勢の大学枠で採用された人が、全く同じ業務内容についたり、同じように昇進するということはありません。採用側も、いわゆる幹部候補生としての採用とそれ以外の者を分けて採用していました。もっとも、入社後めまぐるしい実績を上げた場合、ある程度の逆転はあり得るかもしれません。ただ、学閥の強い会社では、東大や京大じゃないと役員には絶対になれないといった話も聞いたことがあります。
私も就職活動時に上記の話を聞いた時は、正直目からウロコでした。
なにぶん平成初期の話であり、今でもこういった採用方法なのかは分かりませんが、もし今でもそういった採用方法をしている会社があるのであれば、変に隠さずに公表してあげた方が、むしろ学生にとっても、無駄な就活が省けたり、企業選びに失敗せずにいいのではないかと思ったりしています。
ただ、表立って言ってしまうと、枠から外れた大学の就職課などから、あの会社はけしからんとクレームが付いたりして、大変なのかもしれませんね。
なお、学歴で採用に差があることが、許されない差別にあたるかどうかについて、最後に触れておきたいと思います。
日本国憲法14条は法の下の平等を定めており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されないと定めています。
これは、各人の人種や信条などによって差別されてはならないという内容ですが、問題は、学歴による区別は、能力による差別にあたるのではないかという点です。
しかし、学歴は、生まれ持った能力のみで決まるものではなく、その後の努力なども含めて決まるものです。
つまり、人種や性別、出身地などのように、本人の努力いかんでは何ともしがたい内容とは異なります。逆に、生まれ持った能力があったとしても、努力しなければいい結果は得られません。
憲法が定める平等も、全ての結果において平等にしなければならないと言っているのではなく、同一の事情と条件の下では均等に扱うように求めているものです。つまり、同じチャンスを与えられていれば、結果は異なっても、それは平等といえるわけです。これを機会の平等といいます。憲法が定めているのは結果の平等ではなく、機会の平等です。結果の平等まで求めてしまうと、それこそ収入に差があることさえ不平等だということになってきます。
したがって、学歴によって採用に区別があることは、許されない差別とまではいえないものと考えられています。]]>
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2021-3-24
相殺と民法改正(不法行為に基づく債務)
その中で、損害賠償債務に関する相殺について、これまでと大きく変わった部分があります。
相殺とは、自分と相手方が互いに同種の債務を負担している場合において、双方の債務が弁済期にあるときに、相殺の意思表示をすることによって、お互いに同じ金額について債務を免れることができる制度のことです(民法505条1項)。
具体的に言うと、自分がAさんから時計を1万円で譲り受けたとします。その時、こちらもAさんに対して1万円を貸していて、まだお金を返してもらっていなかったので、1万円の貸金と1万円の時計の代金をお互いに相殺して、無しにしましょうというような場合です。
ただし、相殺には例外があって、改正前の民法509条は、不法行為による債務は相殺ができないと定めていました。
例えば、相手に怪我を負わせてしまった場合や、相手の物を壊してしまった場合の損害賠償債務については、相手に債権を持っているような場合でも、現実に支払う必要がありました。
相手に不法行為によって損害を与えた以上、実際にお金を支払うことによって、損害を回復させる必要があるという考え方でした。
しかし、今回の改正で、民法509条が改正され、相殺できない債務として、①「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」、及び、②「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」と変更されました。
①は、単なる過失ではなく、わざとやった不法行為の損害賠償債務については相殺できない、②は、相手が亡くなったり怪我をした場合の損害賠償債務については、相殺できないという内容です(②については、不法行為と限定がされていないので、債務不履行による損害賠償債務にも適用されます)。
その中で、特にこれまでと比べて違いが出るのは、過失による不法行為で相手の物を壊した場合です。これまでできなかった相殺ができることになります。
具体的には、自動車同士の交通事故で互いに物損のみというケースで、双方に過失がある場合、これまで双方の損害賠償義務は相殺できないため、判決では双方ともに賠償金を支払えという内容になっていました。しかし今後は、当事者が相殺の主張をすれば、相殺した上で、相殺しきれなかった金額のみ、一方が他方へ支払えという判決を出すことが可能になります。
なお、これまでも実務的にはそういったケースでは和解によって相殺処理することが多かったのですが、今後は仮に和解できなかったケースでも、判決で相殺処理できることになりました。]]>
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2021-3-22
婚姻に関する民法上の諸規定②
項目番号は前回からの続きで(7)から始めます。
(7)氏(うじ)(民法750条、767条)
氏とは名字のことです。結婚すると、夫か妻のどちらかの名字を選択して名乗ることになっています。
今、夫婦別姓が議論されていて、結婚しても夫婦で異なる名字を名乗ってもいいのではないかという議論があります。
現在のところ、日本では、夫婦が別々の名字を名乗ると家族制度上混乱が起きるとか、子どもの名字をどちらにするかという問題が生じるなどの理由から、夫婦別姓は認められていません。したがって、名字を変更した方が、仕事上で婚姻前の名字を名乗りたい場合は、通称として使うしかありません。ただ、夫婦別姓の議論は今も進められていますので、近いうちに変更される可能性があります。
離婚した際、名字を変えた方は、何もしなければ婚姻前の名字に戻ります。
ただ、婚姻中の名字をそのまま名乗りたい場合は、離婚後3か月以内に市役所に届出をすれば、そのまま名乗ることができます。
(8)子の氏(民法790条、791条)
離婚した際、子供の名字はどうなるのでしょうか。
何もしなければ、子供の名字は変わりません。例えば婚姻中、山田という名字だった場合、離婚しても山田です。
子供の戸籍は婚姻中と同じ戸籍に入ったままです。一般的には夫が筆頭者になって戸籍を作っているケースが多いのですが、離婚して妻がその戸籍から出ても、子供はそのままです。母が親権者になっても、子どもが自動的に母の戸籍に入ることはありません。
母親が、婚姻前の名字に戻って、例えば鈴木という名字に戻したとしても、何もしなければ子供は山田のままです。母親が、自分が親権者なので、自分と同じ名字を名乗らないと都合が悪いと考えた場合、子の氏の変更という手続きを家庭裁判所で行います。その上で、母親と子の入った戸籍を新しく作ることになります。
今回で、離婚に関するお話、婚姻に関するお話は一段落です。
相談の多い分野ですので、また機会があれば触れてみたいと思います。]]>
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2021-3-19
婚姻に関する民法上の諸規定①
(1)結婚適齢(民法731条)
男は18歳、女は16歳にならなければ、結婚をすることができません。
また、未成年のうちに結婚する場合は父母の同意が必要です(父母のうちどちらかがいない場合は片方のみでかまいません)。
(2)重婚禁止(民法732条)
重婚は禁止です。ここでいう重婚禁止は、法律的な結婚を重ねてできないということです。浮気のことではありません。婚姻中の浮気は不貞行為として離婚原因や慰謝料請求の対象になります。
(3)女性の再婚禁止期間(民法733条)
女性は、離婚後100日経過しないと再婚できません。離婚から100日間は、前の夫との間の子供が生まれる可能性があるので、その間に再婚し、子供が生まれると、どちらの子か争いが起こる可能性があるため、設けられた規定です。そのため、離婚から100日経過前でも、妊娠していないことが明らかであったり、子供が生まれた後は、再婚できることになっています。
もっとも、近年はDNA鑑定など、科学の発展により、この規定が時代遅れではないかという議論もあります。
(4)近親婚の禁止(民法734条)
直系血族、三親等内の傍系血族との間では結婚できません。ただし、養子と養方の傍系血族との間ではこの限りではありません。
直系血族とは親子や祖父母、孫などのことです。傍系血族は兄弟やその子などのことです。つまり、親子や祖父母と孫は結婚できないし、兄弟姉妹や叔父叔母とも結婚できません。いとこからは結婚できます。
ただし、実親子ではない者が養子縁組をした時に、養親の側にすでに子供がいた場合、その子供と新しく養子になった者とは戸籍上兄弟姉妹になりますが、その兄弟姉妹には本来の血のつながりがありません。したがって、結婚できることになっています。
(5)直系姻族とは結婚できない(民法735条)。
姻族とは、結婚することで親族関係になる者のことです。直系とは、先ほど述べたとおり、親子や祖父母と孫などのことです。つまり、結婚した配偶者の親や祖父母、一般的にいう義理の父母や祖父母とは結婚できないということです。
これは、配偶者と離婚して姻族関係が終了した後でもできないことになっています。
(6)姻族関係の終了(民法728条)
今述べたように、結婚すると配偶者の親兄弟とも親族になり、それを姻族関係と言います。これはあくまで結婚によって親族になったものなので、離婚すると姻族関係は終了します。また、配偶者が死亡した場合で、残った方の配偶者が姻族関係を終了させる意思表示することでも姻族関係が終了します。
結婚して義理の父や母との関係がうまくいかないケースはあると思いますが、離婚することで、義理の父や母との関係も法律上は解消されることになります。
次回は、婚姻に関する民法上の諸規定の続きです。]]>
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2021-3-17
調停とは
調停とは、簡単に言うと裁判所での話し合いのことです。裁判所で行いますが、裁判とは違います。裁判は、双方が法的な主張と証拠を提出し、それに対して裁判官が白黒の判断をつける手続です。しかし、調停は裁判官が判断するのではなく、裁判所という場で調停委員を交えて話し合いを行うことで、双方の主張を理解し、落としどころを見つけ、合意に至るための手続です。
調停委員とは、裁判所から選任された者で、調停手続を進める役割の人です。離婚調停の場合、1つの事件に男女1名ずつの調停委員が担当します。社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれますが、もともとは多彩な職業の方が選ばれています。たとえば弁護士や司法書士などの専門職もいれば、会社の社長、元警察官、元児童相談所の職員などがいます。
調停の場において、当事者と直接のやり取りをするのは調停委員ですが、毎回の調停の内容は調停委員から担当の裁判官に報告されて、方針について毎回裁判官と協議しています。
ちなみに、私の経歴の中に家事調停官というのがありますが、ここでいう裁判官の役割をする非常勤の裁判官のことです。弁護士の仕事をしながら週1回裁判所で勤務していました。一般の裁判官は調停成立まで当事者の前に出てこないことが多いのですが、私がやっていた調停官の場合は、調停委員の方と一緒に調停室へ入り、当事者と直接やり取りをすることもよくありました。
次回は、その他婚姻に関する民法上の諸規定について書きたいと思います。]]>
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2021-3-15
性格の不一致
性格の不一致により離婚したいという相談は、最も多いケースです。
相手方の言動に長年我慢してきた、気遣いがない、相手の顔を見るのも嫌、言っていることの全てに腹が立つといった主張です。
しかし、いわゆる不貞行為であったり、暴力、虐待といった法的な離婚原因に至らない場合は、裁判上の離婚原因とまではいえないことがほとんどです。
したがって、夫婦双方が離婚の合意に至らなければ離婚できないのですが、このようなケースで夫婦の一方が離婚したいにもかかわらず、他方が離婚したくないという場合は、裁判所の離婚調停を利用して、じっくり話をする必要があります。
調停でも最も多いケースですが、時間がかかります。離婚に合意しないと終わらないので、合意するための条件としてお金をいくら払えとか子供の親権をよこせといった形で主張が泥沼になります。
ただ、当事者同士で話をして埒があかないケースであっても、裁判所で調停をすることで、裁判所の調停委員が双方の言い分を聞いて交通整理をしてくれますので、その中でお互いに相手方の言い分が理解できてきたり、法的にはどうすべきかということが分かってきます。その結果、最終的には何らかの落としどころが見つかって解決することが多いです。
また、仮に離婚条件等で合意に至らず調停で離婚が成立しなかったとしても、当分の間別居し、その間の婚姻費用をどちらがいくら払うなど、条件を整えた上で別居を継続するという調停が成立することもあります。その場合、調停で別居している時点で婚姻関係の破綻が明らかなので、その状態が数年続けば、それ自体を離婚原因として、裁判での離婚が認められるケースもあります。
次回は、調停について述べたいと思います。]]>
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2021-3-12
離婚の際に決めなければならないこと②
(1)財産分与
財産分与は、婚姻期間中に築いた夫婦共有財産の分割です。原則は夫婦で2分の1ずつに分けます。
不動産、預貯金、有価証券、生命保険契約などについて、形の上で夫婦どちらの名義になっていても、婚姻期間中に築いたものであれば、夫婦が共同で築いたものとされ、分与対象になります。
基本的には離婚の時に夫婦双方が各自の名義の財産を開示した上で、全て合計し、2分の1に分ける計算がされます。
ただし、夫婦が共同で築いたことが必要なので、例えば夫婦の一方が親から相続した土地などは除かれますし、途中から婚姻関係が破綻して別居し、家計も別々になっているような場合は、別居した時点の財産を2分の1に分けます。
(2)養育費
子供がいる場合、離婚しても夫婦双方の子供であることは変わりありません。離婚によってどちらかが親権を持ちますが、親権を持たなかった方も、自分の子供として養育の責任があります。
養育費の金額は、子供の人数、年齢、双方の収入に応じた相場があります。一般的には裁判所が定めている算定表を利用して、月額いくらと定めます。支払う期間は通常20歳までですが、最近は子供が大学に進学することが普通になっているので、大学卒業までは養育するものとして、22歳となった最初の3月までといった決め方もよく見られます。
養育費の相場については、少なすぎる、そんな金額で子供が育てられないという声もありますが、養育費は子供にかかるお金を相手が全部出すというものではありません。親権者となった方が引き取って現実に育てていることは金額に考慮されますが、あくまで両方の子供なので、こちらも収入に応じて相応の負担は必要という考え方で作られています。したがって、相手方が支払う金額のみで育てるという考え方にはなっていません。
(3)婚姻費用
厳密には離婚の際に決める金銭ではないのですが、夫婦の関係がこじれてから、それまで相手方配偶者から受け取っていた生活費を受け取れなくなったというケースがしばしばあります。
しかし、婚姻中は、相手方配偶者や子供の生活費について、収入に応じて分担しなければならない義務があり、その支払う生活費のことを婚姻費用といいます。
仮に別居していても、結婚している以上、夫婦の生活費などは収入に応じて分担するという考え方ですので、ここは先ほどの財産分与とは考え方が違います。財産分与は、別居した時は別居した時点での財産を分けることとされていますが、婚姻費用は別居していても離婚するまで支払い続けることが必要です。財産分与は実際に夫婦双方で築いた財産であるからという考え方ですが、婚姻費用は婚姻していることそのものを根拠とするからです。
本来渡すべき婚姻費用について、離婚が成立するまでの間に、月々いくら渡す必要があるか、また、未払になっている婚姻費用をいくら支払う必要があるかなどを決めます。これも双方の収入や子供の人数などに応じて金額の相場があります。
(4)慰謝料
相手方配偶者が不貞行為を行ったり、DVなどを行った場合、精神的苦痛に対する慰謝料が発生します。不貞行為の場合は、相手方配偶者と不貞行為をしていた不貞相手にも請求することが可能です。
ただし、そういった内容ではなく、単に性格的な不一致などが原因で日常的に嫌な思いをしたという程度では、法的な慰謝料までは発生しません。また、相手方が財産をたくさん持っているからといってたくさん請求できるわけではありません。それは基本的に財産分与で請求する話となります。
(5)面会交流
離婚後、親権を持たなかった方も子供の親であることには変わりがないため、基本的に子供と定期的に会い、成長を見守るべきとされています。したがって、離婚後、子供と離れて生活する親が、子供とどの程度の頻度で、どういった方法で面会交流を行うかを決めます。
夫婦としてはどちらも顔も見たくないということであっても、子供からすれば父、母であり、離婚後も両親ともに交流を持つことによって、自分には両親がいると感じられることが、子供の精神的にも望ましいとされています。
もっとも、婚姻中、配偶者や子供に対して暴言や暴力で虐待していたような親であったり、生活態度が著しく不良である親の場合は、面会することでかえって子の精神的に悪影響がある場合もあります。そのような場合は、例外的に面会が認められないケースもあります。
さて、次回は、離婚相談の中で最も多い離婚理由である、性格の不一致について述べたいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1615894821-059589
2021-3-10
離婚の際に決めなければならないこと①
離婚の際に決めるべきことは、婚姻期間中に形成された財産の分与、子供がいる場合の親権、養育費、面会交流の頻度・方法などがありますが、離婚届を出すために必ず決めておかなければならないことは、子供の親権です。
日本の民法では、婚姻中の子供の親権は夫婦共同親権といって、夫婦双方が親権を持っていますが、離婚する場合は父親と母親のいずれかが単独で親権を持つことになります。したがって、未成年の子供がいる場合には、子供の親権を定めないと離婚届が受け付けられません。
それ以外の財産分与などについては、離婚届を出すにあたっては、特に決めていなくても受け付けられます。したがって、子供がいる夫婦でも親権者さえ決めれば離婚届が出せますし、子供がいない夫婦なら、離婚届さえ作成すれば離婚することは可能です。
ただし、通常は、離婚届だけ先に出して、後からまた顔を突き合わせて財産分与や養育費の話をするのは面倒だというケースも多いため、金銭的な事柄を含めて条件を整えてから離婚した方がスムーズかと思われます。そのため、裁判所での離婚調停の場合は、ほとんどのケースにおいて、離婚の話と財産分与や養育費などの話が一緒にされます。
また、離婚を先にしてしまって、ほかの話を何も決めていないという場合であっても、後から財産分与や養育費などの話をすることは可能です。すでに離婚はしているが、財産分与をしてもらっていない、もしくは、養育費を支払ってもらっていないといった事情から、支払を求めて調停を申立てる例もしばしばあります。
さて、次回は財産分与や養育費など、離婚の際に決めるべきことについて、1つ1つ具体的な内容に触れて行きたいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1615894612-844574
2021-3-8
離婚手続の種類
初回である今回は、離婚手続の種類について述べます。
(1)協議離婚
最も普通の離婚手続です。夫婦でお互いに話し合って、役所に離婚届を出すパターンです。婚姻届と同じく、夫婦双方の署名押印、及び、成人の証人2名の署名押印が必要となります。証人は何らかの法的義務を負うわけではありませんが、婚姻関係の解消という重要な身分行為なので、民法上2名の証人の署名が必要とされています。
(2)調停離婚
夫婦間での話し合いで離婚できない場合、すなわち、夫婦の一方が離婚に応じない場合や、離婚条件でもめている場合などに、裁判所を使って話し合う手続きを調停といいます。調停で合意に至れば合意した内容を調停調書として作成します。最終的には調停調書を持って役所へ離婚を届け出る必要がありますが、離婚の日はあくまで調停成立の日です。
(3)裁判離婚(審判による離婚や裁判上の和解・認諾による離婚も含む)
調停でも話し合いがつかない場合、離婚を求める側が裁判を提起し、裁判所の判決をもらって離婚します。ただし、裁判で離婚の判決をもらうためには、法律で定められた離婚原因が必要です。離婚原因として民法770条1項に定められているのは、①配偶者に不貞な行為があったとき。②配偶者から悪意で遺棄されたとき。③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。の5つです。
さて、次回は離婚の際に決めなければならないことについて述べて行きたいと思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1613384764-343258
2021-2-12
法定刑を超える判決
刑事裁判ではまず検察官が求刑として量刑に関する意見を述べ、弁護人が反対の立場から検察官の量刑に対して意見を述べ、両者の意見を聞いた裁判官が最終的に量刑を決定します。
したがって、仮に検察官が誤って求刑をしたとしても、普通は弁護人が気づいて反対の意見を述べますし、万一弁護人が気づかなかったとしても、最終的に法を適用して判断をする立場である裁判官が、正しい量刑で判決をするしくみになっています。
今回のケースは本当に珍しいものといえます。
裁判官も人間ですので、激務の中で見落としたということでしょうが、人の人生を左右する仕事ですので、2度と起こしてはいけないミスといえます。
我々弁護士も、1つ1つの法律を丁寧に確認することの重要性を再認識させられる出来事でした。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1593505260-396908
2020-6-25
任意整理のメリット
任意整理とは、破産や個人再生などの裁判所の手続を利用しないで、貸金業者と個別に交渉して、支払が可能な範囲で支払方法を変更する話し合いのことです。
例えば自宅を所有している場合、破産手続を行うと自宅を失うことになります。また、会社の役員が破産する場合、いったん役員を辞める必要があります。任意整理は、そういったデメリットを回避することができます。
貸金業者の利率は、最近は利息制限法の規制以下となっており、昔に比べると下がりましたが、それでも一般的に年15~20%と高額です。
毎月の返済金額によってはほとんど利息の返還だけを行っている状態に陥り、いつまで経っても元本が減らない(返し終わらない)というケースが見受けられます。
任意整理を行うと、まず現在の元利金の合計を確定させ、それを通常は最大60回(5年間)程度の分割で支払う交渉をします。
つまり、支払額の合計を確定させてしまうので、いつまでも利息が発生し続けて、返済が終わらないという状態にはなりません。
5年間で支払を終える内容で任意整理をした場合、当然のことですが、5年間の支払が終われば返済が終了することになります。
任意整理のやり方ですが、現在の収入から、生活に最低限度必要な金額を除いて、毎月返済にいくら充てることができるかを計算し、その範囲内で毎月返済していくように計画を立てます。
貸金業者が任意整理に応じる返済期間として、一般的には60回程度が限度となります。
したがって、負債全体の金額を60回で割った金額が、毎月返済に充てることができる金額の範囲内であれば、任意整理が可能ということになります。
具体例で説明します。
負債の合計が200万円とします。
これを60回で返済するには、毎月約34,000円が必要となります(単純に60で割ると33,333円ですが、返済の際に銀行の振込手数料が必要となりますし、複数の業者へ返済するのであれば複数の振込手数料が必要となりますので、少し余裕をもって計算しています)。
したがって、理屈上は、月の収入から毎月の生活費を除いて月34,000円程度を返済に充てられるのであれば、任意整理が可能ということになります。
逆に、月の収入が少なく、月の返済金額として2万円程度しか用意できないというのであれば、返済に100回以上かかってしまいますので、任意整理は難しいということになります。
その場合は、破産または個人再生をお勧めすることになるかと思われます。
※なお、上記の例はあくまで単純に数字を計算した場合です。
実際のケースでは、貸金業者ごとに対応が異なる場合や、負債残高によって返済回数の限度がより厳しい場合もあります。
個々のケースごとの判断はご相談いただければと思います。
<まとめ>
現在の残高(または和解時の残高)で固定する。
これ以上利息を発生させない。
任意整理をしない場合:法定利率でも年15~20%
(返しても返しても減らない)
これ以上利息を発生させないことで、数年後に返済が完了するメドが立つ。
原則5年(60回)以内(金額などによっては例外もあり)。
それでも無理な場合は、普通に返済できる金額ではないので、破産をおすすめする。
ただし、自宅を残したいなどの事情がある場合は個人再生へ。]]>
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2020-3-19
「債務リミット」に掲載されました。
大阪市北区で安心して借金相談ができる弁護士、司法書士事務所が探せる「債務リミット」に紹介されました。
同サイトのコンセプトは、『借金問題に悩んでいる方に「債務整理という方法があり、専門家への相談が解決への近道である」ということを伝えることで、一人でも多くの人を借金問題から救いたいと思っております。』とのことです。
当職も2006年の弁護士登録以来、借金問題には積極的に取り組んでまいりました。任意整理、過払金請求、自己破産、個人再生のいずれも多数の取り扱い経験がございます。また、破産管財人としても多数の取り扱い経験がございます。
そういった経験から、悩むよりもまずはご相談いただければとの思いを持っております。
多重債務で支払ができなくなった方、事業主の方で資金繰りが回らなくなった方など、まずはご相談いただければと思います。]]>
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2020-2-10
不動産賃貸借契約の連帯保証人と極度額の定め
その中で、個人の根保証契約(将来にわたり特定の取引から発生する債権を包括的に保証する契約)については、極度額(保証する限度額)を定めなければならなくなりました。定めていない場合は、保証契約自体が無効となってしまいます。
不動産賃貸借契約で個人の連帯保証人をつける場合、まさに上記の趣旨が当てはまりますので、極度額を定める必要があります。
なお、連帯保証人が法人の場合(機関保証)は含まれませんので、極度額を定めていなくても大丈夫です。
定め方としては、例えば「極度額100万円の範囲で保証する」と具体的に金額を定める方法と、「本件賃貸借契約時の賃料の1年分の範囲で保証する」と極度額を決める基準を定める方法があります。連帯保証人にとって、最大いくらの範囲で保証債務を負わされるのか予測できることが重要です。
極度額の相場は契約時賃料の半年から1年分ぐらいと言われています。借主が賃料を滞納し始めて、催促し、それでも支払わず、訴訟提起をするなどした場合、半年から1年ぐらいかかるので、その間の滞納分を考えると、半年から1年分ぐらいが相当ではないかと言われています。あまりに過大な金額を定めると、そもそも連帯保証人のなり手がいなくなるほか、裁判所からも無効だと判断されてしまう可能性があります。
これから始まる制度なので、あくまで推測ですが、一般論として、2年分ぐらいまでなら無効にはならないだろうと言われています。逆に、賃料の5年分などと定めると、大きすぎるため無効と判断される可能性があります。
改正の趣旨として、もともと、主債務者が何年も滞納してから初めて連帯保証人が請求を受けて、いきなり多額の請求をされた場合に、もっと早く請求してもらえば早い段階で解消できた、こんなに多額の請求をされなくて済んだというようなケースで、請求を信義則上無効とした裁判例がありました。連帯保証人がどの程度の金額までなら債務を負うと予測できるかという予測可能性の問題です。連帯保証した以上無限に債務を負わされるのは不当という考え方です。そこから、根保証的な連帯保証人については、予測可能性を担保するために、極度額を定めておかないと無効という改正になりました。]]>
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2020-1-7
過払金とは
今更ですが、過払金とはいったい何か、ご説明したいと思います。
過払金とは、貸金業者などから借りたお金を返済する中で、法律上返さなくてはならない金額を超えて、払いすぎたお金のことです。
利息制限法では、元本が10万円未満の借入の場合は年20%、10万円以上100万円未満の借入の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%の利率を超えた利息は無効と定めています。
しかし、特に平成20年頃までの貸金業者の契約は、利率が20%を超えるものがほとんどで、古いものになると約40%という時代もありました。
このような利率は、利息制限法で定める利率(法定利率)を超えており、このとおり返済を続けていた場合、返せば返すほど払いすぎた金額が増えていき、取引が数年に及んだ場合、本来返さなければならない金額を全部返し終わって、さらに払い続けているケースがあります。その場合、全部返し終わってからさらに払い続けた金額を、過払い金として返還請求できるのです。
仮に、取引が短く、全部返し終わっていない場合でも、上記のとおり法定利率を超えて返済を続けている以上、きちんと計算すれば、貸金業者から請求されている残高より、実際に返済義務のある残高がはるかに少ないというケースも多くあります。
そのため、貸金業者などからの借り入れが長い人ほど、弁護士などの専門家に相談することで、借金を減らしたり、過払金として逆に業者にお金を請求することができるのです。
ただし、平成18年に最高裁が過払金の返還につき借主に有利な判断をした判例(厳密には、法定利率を超える返済が有効となるケースである「みなし弁済」についての条件を非常に厳しく判断した判例ですが、ここでは一般の方にも分かりやすいように、借主に有利な判例とだけ述べておきます)を出してからは、貸金業者も契約上の利率を法定利率以内に抑えることが増えましたので、平成20年頃からは、過払金が出にくくなっています。
とはいえ、ごく最近見たケースでも、いまだに借主の無知につけ込んで法定利率以上の利率で契約させ返済を続けさせている業者もいます。
また、借り入れた時期が古い場合、古い利率のままで返済を継続しているケースもあります。
まずはご自身の契約内容を確認され、法定利率を超えているのではないかと思われる方は、専門家へご相談することをおすすめします。
当事務所でも多数の取り扱い事例があります。
過払金に関するご相談もご遠慮なくお気軽にお問い合わせください。]]>
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2020-1-6
新年のご挨拶
令和となって初めての新年を迎えました。
おかげさまで当事務所もこの3月で開設から8年になります。
これまで破産、離婚、相続、不動産トラブル、建築紛争など多数の事件を扱う中で、皆様の問題解決のお手伝いをさせていただいてきました。
今年は改正民法(債権法)が施行されます。
債権法分野の改正は約120年ぶりとなります。
消滅時効、法定利率、賃貸借の保証契約、請負契約、瑕疵担保責任など、多岐にわたる改正となっております。
家事の分野では、昨年の12月23日に、最高裁判所より養育費・婚姻費用の新しい算定表が発表されました。
算定表は、養育費や婚姻費用の請求において、裁判所が認定する金額の目安となるものです。
収入金額によっては、月1~2万円の増額になるケースもあるようです。
新算定表は以下の裁判所ウェブサイトで公表されています。
http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
労働法分野でも、昨年から有給休暇が義務化され、今年から時間外労働の上限が定められるなど、働き方改革関連法が順次施行されます。
日々変動する価値観や法律に基づき、皆様が抱える問題点について一緒に解決していけるよう、今年も研鑽を重ねて参りたいと思います。
本年もよろしくお願い申し上げます。]]>
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2019-9-30
破産手続の基本的な流れについて(4)
<法人または個人事業者の管財事件手続>
①通常、弁護士に依頼をすると、弁護士から各債権者へ破産準備に入った旨の通知を送付します。
しかし、現在営業中の会社の場合、取引の状況や、従業員の状況、資金繰りの状況等をお聞きして、直ちに営業を停止すべきではない場合もあるかと思います。
いつの時点で破産手続準備を公にするかについては、ケースごとに検討する必要があります。
②破産手続準備を公にする段階が来たら、各債権者に破産準備に入った旨を通知し、従業員の解雇手続なども行います。
会社の場合は、個人と異なり、公租公課も含めて全ての負債の支払を止めていただきます(個人事業主の場合は、公訴公課は原則として支払を継続していただく必要があります)。
③弁護士の下へ債権者から債権調査票が返送されてきます。
一般的に通知から約1ヵ月程度で返送されます。
なお、法人や個人事業主の破産の場合、管財人による財産の換価や未収金の回収などが急がれるケースもあります。そういった場合は、債権調査票が揃わない段階でも、とり急ぎ⑤⑥の申立手続を行う場合もあります。
④事業所が賃貸物件の場合、明渡手続を行います。
仮に、賃料を滞納していた場合でも、とり急ぎ明渡手続を行い、滞納賃料は賃貸人から破産債権として届出をしていただくことになります。
ただし、注意が必要なのは、事業所内の動産類の処分です。
動産類も財産なので、価値が残っているものを捨ててしまったり、相場よりも廉価で転売してしまった場合、裁判所から処分行為を否認されたり、毀損した財産価値の分を破産財団へ組入れ(入金)するよう指示されることもあります。
動産買取業者などに査定をしていただき、適正な価格で処分または買取りをお願いする必要があります。
⑤弁護士により申立書を作成します。
決算書2期分、預金通帳、保険証券、従業員の賃金台帳等、必要な資料も準備していただきます(この段階で初めて準備するというより、実際はご相談の当初から見せておいていただく必要があります)。
⑥裁判所へ申立書を提出します。
⑦裁判所により破産管財人候補者が選任され、候補者と調整の上、開始決定日が決まります。
破産管財人は、破産者の申立内容や財産を調査したり、換価・回収できるのにされていない財産があれば換価・回収を行い、配当が可能となれば配当手続を行う役割の方です。裁判所が弁護士の中から選任します。
申立を行う弁護士は破産者の側の弁護士ですが、破産管財人はいわば裁判所側の弁護士ということになります。
⑥破産者及び申立代理人が、破産管財人と面談します。
内容について聴き取りが行われたり、必要な資料の引継ぎを行います。
⑦破産管財人による財産調査、換価・回収手続などがなされます。
⑧裁判所で債権者集会が開かれ、破産管財人による報告がなされます。
通常、開始決定から約3ヵ月後に1回目の債権者集会が開かれます。
管財人の業務が少なく、配当手続も行われない場合は、1回目の債権者集会で手続が廃止されることもあります。
破産者が不動産を所有している場合は管財人が売却手続を行いますので、その場合は1回目の債権者集会で終わらない場合が多いです。
⑨管財人による財産調査等を経て、配当するだけの財産がないことが判明した場合、破産手続は廃止(終了)となります。
管財人による財産調査等により、配当するだけの財産が形成された場合は、各債権者に対し、債権額で按分(債権額が多い人には多く、少ない人には少ない、金額に比例した弁済方法)した配当が行われ、破産手続は終了します。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1569567338-029232
2019-9-27
破産手続の基本的な流れについて(3)
事業者ではない個人の方で管財事件になる場合は、不動産や一定以上の預貯金・保険解約返戻金などの財産をお持ちか、ギャンブルによる浪費等で裁判所が管財人の監督が必要と判断した場合になります。
<事業者を除く個人の管財事件手続>
①弁護士に破産手続きを依頼すると、弁護士から各債権者へ破産準備に入った旨の通知を送付します。
公租公課を除いて負債の支払を止めていただきます。
②弁護士の下へ債権者から債権調査票が返送されてきます。
一般的に通知から約1ヵ月程度で返送されます。
③弁護士により申立書を作成します。
預金通帳、光熱費領収書、保険証券等、資料を準備いただきます。
不動産をお持ちの場合、固定資産評価証明書を取得していただきます。
登記事項証明書を取得し、不動産業者へ現在の市場価格について査定をお願いします。登記事項証明書の取得、不動産業者への査定依頼は、弁護士の方でも行えます。
④裁判所へ申立書を提出します。
⑤裁判所により破産管財人候補者が選任され、候補者と調整の上、破産手続の開始決定日が決まります。
破産管財人は、破産者の申立内容や財産を調査したり、換価・回収できるのにされていない財産があれば換価・回収を行い、配当が可能となれば配当手続を行う役割の方です。裁判所が弁護士の中から選任します。
申立を行う弁護士は破産者の側の弁護士ですが、破産管財人はいわば裁判所側の弁護士ということになります。
⑥破産者及び申立代理人が、破産管財人と面談します。
内容について聴き取りが行われたり、必要な資料の引継ぎを行います。
⑦破産管財人による財産調査、換価・回収手続などがなされます。
⑧裁判所で債権者集会が開かれ、破産管財人による報告がなされます。
通常、開始決定から約3ヵ月後に1回目の債権者集会が開かれます。
管財人の業務が少なく、配当手続も行われない場合は、1回目の債権者集会で手続が廃止されることもあります。
破産者が不動産を所有している場合は管財人が売却手続を行いますので、その場合は1回目の債権者集会で終わらない場合が多いです。
⑨管財人による財産調査等を経て、配当するだけの財産がないことが判明した場合、破産手続は廃止(終了)となります。
管財人による財産調査等により、配当するだけの財産が形成された場合は、各債権者に対し、債権額で按分(債権額が多い人には多く、少ない人には少ない、金額に比例した弁済方法)した配当が行われ、破産手続は終了します。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1569397760-545076
2019-9-24
破産手続の基本的な流れについて(2)
①弁護士に破産手続を依頼をすると、弁護士から各債権者へ破産準備に入った旨の通知を送付します。
これ以後、税金など公租公課を除いて、負債の支払いは止めていただきます。
この間、一部の債権者だけに支払いを行った場合、偏頗弁済といって、免責不許可事由の1つとなりますので、ご注意ください。
免責については後に述べます。
②弁護士の下へ債権者から債権調査票が返送されてきます。
一般的に通知から約1ヵ月程度で返送されます。
これにより、負債の全容が把握されます。
③弁護士により申立書を作成します。
直近の記帳をした預金通帳、光熱費支払いの領収書、自宅の賃貸借契約書、生命保険証券など、裁判所へ提出する必要がある資料も準備していただきます。
④裁判所へ申立書を提出します。
何らかの不備があれば補正します。
特に不備がなければ、早ければその日にも開始決定が出ます。
(管財事件の場合は、管財人の選任などがあるため、もう少し時間がかかります)
⑤裁判所の開始決定と同時に、破産手続の廃止決定も出ます。
破産状態にあるため財産の清算を行う必要があるというのが破産開始決定ですが、管財事件のようにこの後実際に財産を調査したり換価したりする手続がありませんので、開始と同時に廃止となります。
ただし、破産開始・廃止決定が出たからといって、直ちに借金の支払義務がなくなるわけではありません。
支払義務がなくなるには、裁判所による免責決定が出る必要があります。
免責決定を出すために、裁判所は債権者の意見を聞く必要があります。
そのため、約2ヵ月間の意見申述期間をおきます。
⑥債権者から特に意見がない、または、意見が理由のないものであった場合は、免責決定が出ます。
なお、ケースにより、開始決定前に裁判所で裁判官からの聴き取りを受ける審尋期日や、免責決定の前に裁判所へ呼ばれる期日が入ることもあります。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1569397662-777780
2019-9-20
破産手続の基本的な流れについて(1)
①同時廃止手続
一般的なサラリーマンなど、事業者ではない個人で、かつ、資産がほとんどない方のための手続です。管財手続のように破産管財人が選任されませんので、手続が比較的簡易・迅速に進みます。
②管財手続
事業者である個人、不動産など一定以上の財産をお持ちの個人、会社などの法人のための手続です。裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人が財産の調査、換価手続などを行い、債権者集会を経て、配当できるだけの財産が残れば、債権者に対する配当手続を行います。
次回から、2回に分けて、同時廃止手続、管財手続のそれぞれの手続の流れをご紹介したいと思います。]]>
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2019-5-7
民法改正(債権法)について
来年4月1日から、改正民法(債権法)が施行されます。
民法には財産法と家族法の分野があり、財産法の中には物権法と債権法があるのですが、今回の改正にかかる部分は債権法です。
債権法はこれまで大きな改正がなく、明治29年の民法成立以来、121年ぶりの改正と言われています。
主な改正点は、時効期間の統一、法定利率の改正、個人根保証契約の範囲の限定、瑕疵担保責任の改正、などがあります。
特に、時効期間の改正、瑕疵担保責任の改正などは大きな改正となります。
これまで細かく定められていた消滅時効の期間が、概ね5年間に統一されます。
売買や請負などの瑕疵担保責任は、商品や仕事に欠陥があった場合に、修繕や損害賠償を請求できる権利ですが、今後は契約不適合責任として、債務不履行(契約どおりの商品を提供しなかった)責任の1つとなります。
請求できる期間も、従来は商品の引渡しや仕事の完成から何年と定められていましたが、改正法では不適合の事実を知ってから1年以内にその事実を通知すればよいことになりました。
もっとも、これらの改正内容は、契約で別の定めをすることも可能です。
そのため、改正法を踏まえ、きちんとした契約書を作成することが重要になります。
改正法に関するセミナーや、契約書の作成、チェックなども行っておりますので、必要があればご相談ください。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1550569887-467921
2019-2-19
不倫相手への慰謝料請求
ネットのコメント欄などには、「全国の間男に朗報」など、不倫相手の責任を否定するかに見える判決に対し、批判的なコメントが書かれています。
しかし、この判決は不倫相手に「何らの」慰謝料も請求できないという内容ではありません。
そもそも、不倫相手への慰謝料とは何でしょうか。
まず、夫婦間においては、互いに貞操義務がありますので、配偶者以外の者と肉体関係を持つ、いわゆる不倫は、不貞行為となります。
不貞行為は民法709条の不法行為にあたるので、夫婦のうち不貞行為をされた側は、不貞行為をした相手方に対し、慰謝料請求ができます。
これが、不貞行為についての慰謝料です。
この不貞行為についての慰謝料は、夫婦の相手方だけでなく、相手方と不倫をした不倫相手にも請求できます。不貞行為を行った夫婦の一方と、不倫相手が共同して不法行為を行ったという理解です。
そして、不法行為に基づく損害賠償請求は、民法724条により、損害及び加害者を知った時から3年間で時効消滅するとされています。
つまり、夫婦の相手方に不貞行為についての慰謝料を請求する場合は、相手方が不貞行為をしていた事実を知ってから3年以内に、不倫相手に不貞行為についての慰謝料請求をする場合は、不貞行為の事実と不倫相手が誰かを知ってから3年以内に請求しないと、消滅時効にかかってしまうのです。
今回の最高裁判例の事案は、不貞行為から3年以上経っていましたので、不貞行為についての慰謝料は、消滅時効にかかっていたのです。
そこで、何を請求したかというと、不貞行為の後、不貞行為によって夫婦関係が悪化し、最終的に離婚に至ったので、離婚したことについての精神的苦痛を、不倫相手に請求したのです。
今回の事案は、離婚から訴訟提起までは3年以内だったので、この慰謝料が認められるかどうかが大きな問題となりました。
しかし、最高裁は、結論として、離婚についての慰謝料を不倫相手に請求することはできないとしました。最初から夫婦を離婚させようという意図で夫婦間に干渉した場合であればともかく、そこまでの意図がなく、単に不倫しただけであれば、その後夫婦が必ずしも離婚するわけではないため、不倫相手に離婚の責任までは負わせられないという判断です。
ただし、これはあくまで離婚の責任を不倫相手が負うかどうかという話です。最初に述べたとおり、不貞行為自体は民法上不法行為にあたり、不倫相手にも損害賠償請求できることは変わりありません。
したがって、不倫相手が何の責任も問われないわけではありません。
決して「間男に朗報」という判決ではありませんので、不貞行為には責任が伴うことをご理解ください。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1539249680-716134
2018-10-11
倒産手続について(はれのひ事件に関して)
破産自体が詐欺じゃないか、なぜお金が返って来ないのか、といった声が上がりました。破産手続との関係で、少しお話したいと思います。
破産原因として、支払不能という概念があり、支払不能とは、一般的継続的に弁済することができない状態を指します。
支払不能を推定させるものとして支払停止があり、手形の不渡りなど、支払ができない旨を外部に表示する行為を指します。
このほか、法人の場合、債務超過も破産原因となります。
さて、破産法の規定上、支払不能や支払停止後は、一部の債権者のみに支払うことはできません。一部の債権者のみに抜け駆け的に支払うことを偏頗弁済といい、債務者が自然人の場合は免責不許可事由に該当しますし、債権者の側から見ても、破産手続の中で、管財人から受け取ったものを返還せよという請求を受けることになります。
つまり、破産手続の準備が開始された場合、債権者としては、破産手続の中で配当を受けるしかないということになります。
債務者としても、破産手続の準備を開始した場合、支払停止が明確になったため、一部債権者のみに支払うことができません。
この点、はれのひ側は、事前に破産することが分かっていたのに、隠して顧客からお金を集め続けたことが、不当ではないかという意見もあると思います。
初めから仕組んで、最初から商品を渡すつもりがなかったのにお金を受け取っていたとすれば、それは詐欺です。
しかし、通常通り営業し、前金で代金を受け取っていたが、資金繰りに行き詰まり、営業継続できなくなったので、支払停止というのは、詐欺ではありません。
最初から商品を渡すつもりがなかったのに代金を受け取ったのか、そうではなかったのか、その線引き、立証は難しいものとなります。
正直、本件の顧客が一般消費者であり、しかも成人式という一生に一度のイベントで使用する着物の注文であることを考えると、このタイミングで営業を停止したことは、問題があったと思います。
しかし、企業の破産手続において、支払停止の前日まで通常通り営業していることはよくあります。
ここをとらえて詐欺と主張・立証することは、かなり難しいものと思います。
なお、はれのひの場合、決算書を粉飾して銀行から融資を受けていました。これは詐欺にあたります。
銀行は決算書の中身を見て、この会社の営業状態ならお金を貸しても大丈夫と判断して貸します。その重要な資料である決算書を、本当の内容だと借りられないために虚偽の内容で出して融資を受ける、これは詐欺です。
したがって、本件ではその点は刑事事件として起訴されています。
ただ、中小企業では多かれ少なかれ、粉飾決算が存在することは、一般的にもご存知のことと思います。
しかし、それらが全て刑事事件になるわけではありません。むしろ、刑事事件にならないことも多いです。
理由として、中小企業の場合、一般的にある程度の粉飾決算をしていることが多いことが、常識的に知られている以上、警察・検察としても、軽微な内容までいちいち刑事事件にしていると手が回らないこと、融資する銀行の側としても、ある程度の粉飾決算はあり得るものとして決算書を慎重に見ており、仮に見抜けなかった場合、プロとして見抜けなかったことが恥ずかしい部分もありますので、いちいち刑事事件にしないという理由もあると思われます。
今回の件は、融資詐欺としては金額的に極めて大きいとまで言えませんが、倒産の社会的影響が大きかったこともあり、刑事事件化したものと思われます。その意味では、着物を受け取れなかった被害そのものを詐欺としては立件できませんでしたが、融資詐欺の立件の判断に、結果として会社を倒産させ、着物を受け取れなかった被害者が多数出たことも考慮されたのではないかと考えます。
なお、破産事件については、会社に配当できるだけの財産がないということで、6月20日に廃止され、終了しています。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1537355329-549311
2018-9-17
ひき逃げと酒気帯び
この両者に関しては、ほぼ刑事事件として起訴されます。
前提として、交通事故を起こして、相手の人に怪我をさせたとしても、必ず起訴されるとは限りません。
特に常習というわけでもなければ、きちんと警察へ連絡し、相手方の救護を行い、民事で示談していれば、起訴まではされないことも多いものです。
しかし、ひき逃げと酒気帯びに関しては、特に処罰の必要性が高いため、仮に示談が成立していても、起訴までされることが多いです。
私が司法修習を行っていた頃、修習で見せていただいた事件の中に、おじいさんが高校生をひき逃げした事件がありました。
おじいさんは仕事の途中で軽トラックに乗っていて高校生と接触、高校生は軽傷でしたが、おじいさんは救護しないでそのまま走り去ってしまいました。
その後、おじいさんは逮捕されて起訴されました。
高校生の怪我は軽いものでしたので、おじいさんが事故の後きちんと対応していれば、逮捕も起訴もなかったのではないかと思われた事案でした。
今般、某芸能人の事件がニュースになっていますが、事故後の対応を誤ったことについて、とても残念に思います。]]>
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http://www.ikunami-law.com/blog/#1534525075-677314
2018-8-17
書面の重要性
中小企業の倒産、個人の破産を中心に、債権回収や契約書チェック、不動産トラブル、相続、離婚、交通事故などを扱っています。
詳しくはHPをご覧ください。
私は過去に家電メーカーの営業職をしていたことがあります。
当時、販売店を回っていたときに、大型テレビの注文をいただきました。
当時は今と違って大型テレビがまだ高級品であり、販売店から、納品だけでなく、設置までやってくれと頼まれましたことがありました。
ただ、設置は、コンセントをつないで、アンテナケーブルをつないで、チャンネル調整するだけですから、販売店であれば当然できる内容でした。
しかし、メーカーに設置を依頼される場合、サービスの人間が出張しますので、費用がかかってしまいます。そのため、店主に対し、お金がかかりますがいいですかと聞きました。それに対して店主は、大事なお客さんだから間違いのないようやってほしいと言われたので、注文を受けました。
ところが、納品して、後に会社から請求書が送られると、何かすごく怒ってるんですよね。話を聞くと、テレビを設置しただけで金を取るのかとおっしゃる。だからお聞きしましたよねと話しても、興奮して、最後には請求書を破り捨てられました。
で、何が言いたいかといいますと、日常の取引、特に日頃取引のある相手方の場合、口頭のやり取りも多いかと思うんですが、やり取りした内容を、注文書なり、何らかの書面の形で、相手方から取っておいてくださいということです。相手方が作成したことが明確であれば、FAXやメールでもかまいません(メールの場合でも、プリントアウトすることで書面化できます)。
後にトラブルになった場合、裁判所は書面による証拠を重視しますので、仮にこちらの言い分が正しくても、証拠がないと何もできない可能性があります。
また、書面による証拠が残っていれば、相手方との話の中で書面を示して、相手方の勘違いなどを正すこともできるので、そもそもトラブルを未然に防いでくれることも期待できます。
相談に来られる中で、言い分は正しいのに、証拠がなく、有効な解決方法を示せない場合もあります。日頃から、書面の重要性を意識しておいていただければと思います。]]>
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2018-8-16
弁護士の仕事
1 民事事件
お金を貸したけれど返してくれない、商品を売ったが代金を払ってもらえない、家賃を払わないので出て行ってほしいといった、個人と個人、または個人と法人の間の法律関係の紛争を民事事件といいます。
会社から不当に解雇された、残業代を払ってもらえないといった労働事件も、広い意味では民事事件です。
交通事故が起きて、怪我をした人が加害者に対して損害賠償請求をするのも民事事件です。
2 刑事事件
犯罪を犯したとされる人が逮捕されたり、国家による刑罰を受けるべきとして起訴され、有罪か無罪か、どのぐらいの刑を科すのかといった裁判を受ける場合を、刑事事件といいます。
ドラマや小説でよく見るシーンは刑事事件がほとんどです。事件に至る背景が被告人の人生そのものであるため、ドラマとして描きやすいのだと思われます。実際、裁判所では日々さまざまな裁判が行われていますが、その1つ1つにその人のドラマがあります。いわゆるドラマや小説に描かれている弁護活動は、やや脚色されたものが多く、実際はもっと地味ですが、裁判所で事件を傍聴するのであれば、刑事事件が1番分かりやすく面白いかと思います。
3 家事事件
離婚、親権、遺産分割、後見など、夫婦や親子、親族関係に関する紛争を家事事件といいます。
結婚や離婚は本来、当事者の意思に委ねられる事柄ですし、親が亡くなって遺産をどう分けるかという話も、本来は相続人同士で決める話ですので、原則が裁判ではなく調停事件になります。
調停とは、裁判所において話し合う手続で、最終的には当事者間の合意を目指します。裁判所は調停委員が間に入って話の交通整理を行います。ただし、どうしても調停で話し合いがつかないケースでは、裁判官の判断を仰ぐ審判手続や、訴訟手続に移行することもあります。
4 その他
国や自治体の決定、税金の賦課に異議がある場合など、行政の処分を争う紛争を行政事件といいます。
交通事故の例でいうと、被害者が加害者に損害賠償請求するのが民事事件、加害者が過失運転致傷罪などで刑事罰を受けるのが刑事事件、免許証の点数が引かれて免許停止になるのが行政事件ということになります。
また、広い意味では民事事件に入りますが、会社が倒産する際の手続は、倒産事件といいます。個人の破産事件は、主に金を貸してくれた債権者と破産者の問題ですが、会社の倒産の場面では、事業所の明渡の問題、雇用していた労働者の問題、在庫品の処分の問題、リース物件の引き揚げの問題など、様々な問題が絡み、関係者も多くなります。
その他、弁護士会の相談センターでの法律相談担当、自治体での法律相談担当、講演会の講師、行政の委員会の委員などがあります。
5 私の主な仕事
私自身が主に扱っている仕事は、企業法務では契約書チェック、売掛金回収、取引先とのトラブル、従業員とのトラブル、倒産処理など、個人法務では借金整理、破産、離婚、相続、交通事故、不動産賃貸借のトラブル、建築瑕疵などが多いです。
特に、個人の借金問題、企業の倒産処理には力を入れています。]]>
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2017-3-7
幾波法律事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。
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この度、ホームページをオープンいたしました。
幾波法律事務所では、中小企業の企業法務、個人のお客様の法的問題の解決を中心に、「倒産・破産」「借金問題」「遺言相続」「離婚・親子問題」「交通事故」「債権回収」などを扱っております。企業経営者、法務ご担当者の皆様におかれましては、契約書のチェックや売掛金回収など、小さな案件でもお気軽にご相談ください。
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