2018年10月11日

倒産手続について(はれのひ事件に関して)

今年、世間を騒がせた「はれのひ」の破産がありました。
破産自体が詐欺じゃないか、なぜお金が返って来ないのか、といった声が上がりました。破産手続との関係で、少しお話したいと思います。

破産原因として、支払不能という概念があり、支払不能とは、一般的継続的に弁済することができない状態を指します。
支払不能を推定させるものとして支払停止があり、手形の不渡りなど、支払ができない旨を外部に表示する行為を指します。
このほか、法人の場合、債務超過も破産原因となります。

さて、破産法の規定上、支払不能や支払停止後は、一部の債権者のみに支払うことはできません。一部の債権者のみに抜け駆け的に支払うことを偏頗弁済といい、債務者が自然人の場合は免責不許可事由に該当しますし、債権者の側から見ても、破産手続の中で、管財人から受け取ったものを返還せよという請求を受けることになります。

つまり、破産手続の準備が開始された場合、債権者としては、破産手続の中で配当を受けるしかないということになります。
債務者としても、破産手続の準備を開始した場合、支払停止が明確になったため、一部債権者のみに支払うことができません。

この点、はれのひ側は、事前に破産することが分かっていたのに、隠して顧客からお金を集め続けたことが、不当ではないかという意見もあると思います。
初めから仕組んで、最初から商品を渡すつもりがなかったのにお金を受け取っていたとすれば、それは詐欺です。
しかし、通常通り営業し、前金で代金を受け取っていたが、資金繰りに行き詰まり、営業継続できなくなったので、支払停止というのは、詐欺ではありません。
最初から商品を渡すつもりがなかったのに代金を受け取ったのか、そうではなかったのか、その線引き、立証は難しいものとなります。

正直、本件の顧客が一般消費者であり、しかも成人式という一生に一度のイベントで使用する着物の注文であることを考えると、このタイミングで営業を停止したことは、問題があったと思います。
しかし、企業の破産手続において、支払停止の前日まで通常通り営業していることはよくあります。
ここをとらえて詐欺と主張・立証することは、かなり難しいものと思います。

なお、はれのひの場合、決算書を粉飾して銀行から融資を受けていました。これは詐欺にあたります。
銀行は決算書の中身を見て、この会社の営業状態ならお金を貸しても大丈夫と判断して貸します。その重要な資料である決算書を、本当の内容だと借りられないために虚偽の内容で出して融資を受ける、これは詐欺です。
したがって、本件ではその点は刑事事件として起訴されています。

ただ、中小企業では多かれ少なかれ、粉飾決算が存在することは、一般的にもご存知のことと思います。
しかし、それらが全て刑事事件になるわけではありません。むしろ、刑事事件にならないことも多いです。
理由として、中小企業の場合、一般的にある程度の粉飾決算をしていることが多いことが、常識的に知られている以上、警察・検察としても、軽微な内容までいちいち刑事事件にしていると手が回らないこと、融資する銀行の側としても、ある程度の粉飾決算はあり得るものとして決算書を慎重に見ており、仮に見抜けなかった場合、プロとして見抜けなかったことが恥ずかしい部分もありますので、いちいち刑事事件にしないという理由もあると思われます。

今回の件は、融資詐欺としては金額的に極めて大きいとまで言えませんが、倒産の社会的影響が大きかったこともあり、刑事事件化したものと思われます。その意味では、着物を受け取れなかった被害そのものを詐欺としては立件できませんでしたが、融資詐欺の立件の判断に、結果として会社を倒産させ、着物を受け取れなかった被害者が多数出たことも考慮されたのではないかと考えます。

なお、破産事件については、会社に配当できるだけの財産がないということで、6月20日に廃止され、終了しています。

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