2023年9月21日

祖父母から離婚した親に対し孫の面会交流審判を求めることの可否

離婚後、子の親権を持った親に対し、他方の親から子の面会交流を求めることはよくあると思います。
それでは、親以外の第三者から親権を持った親に対して子の面会交流を求めることはできるのでしょうか。
それに対する判断を示したのが、令和3年3月29日の最高裁決定です。

事案としては、両親A・Bが婚姻中、両親A・Bと子と祖父母(Aの親)が同居していました。しかし、離婚によりAとBが別居し、その後交代で子を監護することになりました。その後、Aが死亡したことにより、子はBが監護することになり、祖父母は子と会えなくなりました。そこで、祖父母からBに対し、子との面会交流について審判を申し立てたというものです。

1審は、父母以外が面会交流の審判を申し立てることはできないと判断しました。
2審は、父母以外の第三者であっても、事実上子を監護してきたなど子との間に父母と同視しうるような親密な関係があり、面会交流を認めることが子の利益にかなうと考えられる場合は、面会交流を認める余地があると判断しました。
最高裁は、1審と同様、父母以外が面会交流の審判を申し立てることはできないと判断しました。

父母以外の家族、特に祖父母などが、父母の離婚により孫と会えなくなったとして、孫との面会交流を求めたいというケースはあるかと思います。
ただ、面会交流申立の根拠規定は、民法766条であり、原則として父母が離婚の際に協議によって定めることとされており、協議が調わないときは家庭裁判所が定めるとされています。つまり、審判の申立権者は、条文上は父母となっており、祖父母は含まれていません。
しかし、学説の中には、上記の2審での判断のように、事実上祖父母が子を監護してきた場合など、父母と同視しうるような親密な関係があるときは、面会交流を認める余地があるのではないかという考えもあり、これまで議論がなされてきました。
そういった問題に対し、最高裁が初めて判断を示した判例になります。

最高裁は、あくまで条文通り、父母以外が審判を申し立てることができないとしました。
その理由としては、父母の間で面会交流をめぐる対立がある中で、さらに祖父母からも面会交流を申し立てることが可能になると、紛争が複雑化して解決が困難になること、また、父母以外の第三者からの面会交流の申立てを認めることは、父母の親権行使の制約にもなることなどが考えられています。

なお、祖父母と子の親との間で話し合いができ、合意のもとに面会交流について定めることは、当然のことながら、否定されていません。したがって、家事調停において、祖父母から子の親に対して面会交流を求め、調停を申し立てることは可能です。
しかし、話し合いがつかなかった場合に、祖父母から裁判所に対して、面会交流を定める審判(裁判所において判断して欲しいという申立)を申し立てることはできないということです。

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2023年8月30日

遺言書の検認

遺言書の検認という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
遺言書は、遺言の作成者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書いて押印する自筆証書遺言や、公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言などいくつかの種類があります。
そのうち、公正証書遺言以外の遺言については、家庭裁判所で検認という手続が必要です。
(遺言の種類・要件については、以前にも詳しく書いたことがあります。こちらをご参照ください)

検認は、家庭裁判所において、裁判官が遺言書の原本を確認し、間違いなくこの内容で遺言書が存在するということを確認する手続です。
検認手続の際には、法定相続人全員に対して、検認が行われる期日が通知されますので、法定相続人全員に対し、遺言書が存在することが明らかになります。また、通知を受けた法定相続人は期日に出頭して遺言書の内容を見ることができますので、どのような遺言書がのこされているのか、各相続人にとって知ることが可能となります。

そして、検認が終わると、裁判所書記官が、遺言書の原本に検認済の証明書を付けてくれます。したがって、検認済の証明書が付いた遺言書のみが本物であることが分かりますので、遺言書の偽造・変造などを防ぐ意味もあります。

このように、遺言書は検認手続を経て初めて遺言書として使用することができますので、検認を経ていない遺言書の場合、不動産登記や銀行の手続に持参しても、使用できないことになります。

したがって、公正証書遺言以外の遺言書を発見した場合、被相続人の死後、速やかに検認手続を行ってください。

なお、自分に不利な遺言書であっても、隠したり毀損したりした場合、民法上の相続欠格事由にあたり、相続人としての資格を失うおそれがありますので、ご注意ください。

※令和2年7月10日から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まっており、同制度を利用している場合は、検認手続が不要となります。
また、上記で述べたとおり、公正証書遺言の場合、公証役場で作成されたものであることから、検認が不要とされています。

※今回の遺言書の種類に関する話を含め、法定相続人、法定相続分、具体的な遺産分割、遺留分など、過去のブログで相続について順を追って詳しく解説しています。
以下の各ページをご覧ください。

相続と遺産分割①
相続と遺産分割②
相続と遺産分割③
相続と遺産分割④
相続と遺産分割⑤
相続と遺産分割⑥

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