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相続における死亡保険金と遺産への持ち戻しについて①

生命保険の死亡保険金を受取人指定していた場合、遺産分割の対象にならないという話を聞いたことがあるかと思います。

 

例えば父親が亡くなって、兄弟が3人いるにもかかわらず、生命保険の死亡保険金の受取人を長男に指定しているということがあります。

この場合、父親の遺産分割において、兄弟3人の法定相続分は3分の1ずつとなるはずですが、この死亡保険金については原則として遺産分割の対象とはなりません。

すなわち、遺産として預貯金が2700万円あり、死亡保険金が300万円だとすると、全部で3000万円あるように見えますが、遺産分割で遺産としてカウントされるのは、このうち預貯金の2700万円だけとなります。受取人を指定された死亡保険金は、指定された受取人の固有財産とされるため、遺産分割の対象にならないのです(ただし、これは民法上の遺産分割の話であり、税法上はみなし相続財産として相続税の課税対象となります。このあたりのことは税理士にご相談ください)。

 

したがって、上記の例で言うと、法定相続分に従って遺産分割した場合、取り分は2700万円の3分の1ずつ、すなわち900万円ずつとなり、長男はそれとは別に死亡保険金300万円を受け取ることになります。

 

ところが、上記のケースで、死亡保険金が300万円ではなく、3000万円だったらどうでしょうか。

遺産としての不動産と預貯金が合計2700万円。死亡保険金が3000万円。こうなると、遺産分割として900万円ずつ受け取り、長男だけ別に死亡保険金3000万円を受け取ることがいかにも不公平に見えます。

さすがにこのようなケースでは、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」として、死亡保険金を特別受益に準じて遺産に持ち戻しなさい(遺産分割の対象としなさい)という最高裁判例が出ています(最高裁平成16年10月29日決定)。

 

それでは、死亡保険金がどの程度の金額であれば、「不公平が~到底是認することができないほど」といえるのでしょうか。

一般的には、保険金の金額が遺産全体の評価額の半分を超えれば持ち戻しが命じられる可能性が高いと言われています。ただ、今のところ裁判所から明確な基準は示されていません。

 

さて、この死亡保険金の遺産への持ち戻しについて、興味深い裁判例があります。これについては次回のブログで紹介したいと思います。