消滅時効と時効の更新(中断)
前回のブログで、消滅時効期間について述べました。その中で、消滅時効とは、一定期間権利を行使しないことで、権利が消滅する制度だと述べました。ここでいう権利を行使するとはどういうことでしょうか。
一般的な言葉の意味から考えると、相手方に対し、「貸金の〇〇円を返してくれ」「〇〇の代金を支払ってくれ」と請求することで権利を行使したことになるように思えます。
しかし、時効期間を止めるための権利行使は、単に「返してくれ」「支払ってくれ」と請求するだけでは不十分です。
単に「返してくれ」「支払ってくれ」と請求することを、民法では「催告」といいます。
催告は、一時的に時効の完成を止めることができますが、催告してから6ヵ月以内に訴訟提起などを行わないと、時効が完成してしまいます。
すなわち、時効の完成を止めるための権利行使は、訴訟提起などの裁判上の請求である必要があります。
このように、訴訟提起によって時効の完成を止めることを、時効の更新といいます。
止められた時効は、再度、その時点から新たに進行を始めます。時効期間がリセットされる形になります。したがって、そこから再び5年間が経過すれば、時効にかかります。
時効をリセットすることを、従来は時効の中断と呼んでいましたが、改正によって時効の更新という言い方に変わりました。リセットによって時効はまた新たに進行を始めるため、ちょうど契約を更新したような形になることから、時効の更新という言い方に変わったものです。
また、裁判所において強制執行の申立てをした場合も、時効は更新されます。
さらに、権利行使とはやや異なりますが、相手方の方から、〇〇の支払義務があることを認めますと述べた場合、債務の承認として、時効が更新されます。債務承認の場合は、後で言った言わないの争いにならないように、口頭で済ませるのではなく、きちんと承認する旨の書面をもらっておくべきです。
なお、上記で、催告することで一時的に時効を止めることができると書きましたが、これは時効の完成猶予といいます。催告してから6カ月以内に訴訟提起などをすることで時効が更新されますが、訴訟提起などをしないと効力が失われるため、あくまでその間の時効完成を猶予するものに過ぎないからです。改正前は時効の停止と呼ばれていましたが、これも完成猶予の方が実態と合っているということで言い方が変わったものです。