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和解・調停における期限の利益喪失条項について

和解や調停の際に、相手方が一括で支払う資力がなく、分割支払の約束をすることがあります。
その場合、単に分割支払の約束をしているだけでは、途中で相手方の支払いが止まっても、残額の全部を請求することはできません。
具体的に言うと、例えば1月に和解して、全部で60万円を、1月から12月まで毎月末日に5万円ずつ12回(1年間)支払うという合意ができたとします。
相手方は1月と2月は5万円ずつ支払いましたが、3月以降支払が止まったとします。
今が5月1日として、相手方が支払わないので強制執行したいと考えました。
その場合、60万円から支払済の10万円を引いた残額50万円について強制執行できるのかというと、できないのです。なぜかと言うと、5月~12月分はまだ支払期限が来ていないからです。
したがって、5月1日の時点で強制執行できる金額は、支払期限が来ているのに相手方が支払っていない、3月と4月分の計10万円だけということになります。
こういった事態を避け、相手方が滞納した場合に残額を全部請求することができるように、一般的に、和解・調停において分割支払いを認める時は、期限の利益喪失条項を入れます。
例えば、「支払いを2回分以上怠った場合、期限の利益を喪失し、残額を一括で支払う」というものです。
分割支払というのは、一部について今すぐ払わずに、将来まで待ってもらうという内容ですから、相手方にとっては期限の利益が与えられているということになります。その期限の利益を失わせるということです。
相手方が支払いを怠った場合に、期限の利益を喪失させる条項を入れておけば、相手方の支払が止まった場合に、例えば2回分怠った場合としていれば、2回分以上の金額を滞納した段階で、残額を一括請求できることになります。もちろん、強制執行も可能となります。

 

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